ブレイクすることよりも、続けることの方が難しい

今年に入って『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』など出演映画が立て続けに公開。ドラマでも『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』『ここは今から倫理です。』『特捜9 season4』『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』と八面六臂の活躍です。まさに今ブレイクの渦中にいながら、山田さんは自らが置かれている状況を冷静にとらえています。


「応援していただけることはすごくありがたいです。でも、こうやっていろんな方からキャーキャー言ってもらえる状況を、僕はいい意味であまり信用していない。ブレイクはそのときだけのことだから。ブレイクすることよりも、続けることの方が難しい。一度評価されたら、次も評価されなきゃ、またその次も評価されなきゃとずっと続いていく。大事なのは、そこでどう悩み、どう変わり、どう進化していくか。今、自分にはそれが課せられているんだろうなと思います」

 

話題性や注目度といった移ろいやすいものに気をとられていても足場が揺らぐだけ。ならば、俳優として集中すべきは何か。山田さんの考えにブレはありません。

「山田裕貴にこの役をやってほしいんだと選んでくれた人の期待に応えること。それに尽きると思います。絶対いると思うんです、山田裕貴にお願いしたけど、考えていたのと違ったなと心の中でがっかりしている人は。すべての人が100%満足しているわけじゃないことはわかってる。でもそれをできる限り100%に近づけていくことが、僕のやるべきこと。しかも、そういうことって絶対誰も直接は言ってくれないから。なんとなく良かったよと言ってくれる言葉に満足していたら、あっという間に誰からも求められなくなる。そうなるのは絶対嫌だから、選んでくれた人の期待にどうにか100%で応えられるようになりたい。それはもちろんこの『海王星』でも同じです」

多忙な毎日に身を置いていると、つい流してしまいそうになる危機感に、ちゃんと自覚的であり続ける。それは言葉にするよりもずっと難しいこと。山田さんがどれだけ多くの作品に出演し続けても、決して摩耗されないのは、そうした切実な危機感と常に戦い続けているからかもしれません。

自分のやりたいことより、人から求められることに応える方が燃える。山田さんの仕事へのスタンスは、きっと多くの働く人のヒントになるはずです。

 

山田裕貴 Yuki Yamada
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。以降、連続テレビ小説「なつぞら」、「ここは今から倫理です。」、「青のSP―学校内警察・嶋田隆平―」、「特捜9 season4」などに出演。映画でも『HiGH&LOW』シリーズ、『あゝ、荒野』、『あの頃、君を追いかけた』、『東京リベンジャーズ』など話題作への出演が続く。19年、舞台『終わりのない』で第74回文化庁芸術祭賞新人賞を受賞。現在、映画『燃えよ剣』が公開中。映画「テン・ゴーカイジャー」が11月12日(金)公開。アニメ映画「フラ・フラダンス」が12月3日(金)公開。22年も映画『ハザードランプ』の公開が控えるほか、連続テレビ小説「ちむどんどん」への出演も決定している。

 

<公演情報>
PARCO PRODUCE 2021 音楽劇『海王星』


作:寺山修司
演出:眞鍋卓嗣
音楽・音楽監督:志磨遼平(ドレスコーズ)
出演:山田裕貴 松雪泰子 清水くるみ 伊原六花
佐藤誓 冨永竜 山岸門人 澤魁士 眼鏡太郎 野々山貴之
内田慈 坪井木の実 白木原しのぶ
小山雲母 片桐美穂 金井美樹 島ゆいか 吉井乃歌
大谷亮介 中尾ミエ ユースケ・サンタマリア

東京公演:2021年12月6日(月) 〜2021年12月30日(木) @PARCO劇場
大阪公演:2022年1月8日(土) 〜2022年1月10日(月)@ 森ノ宮ピロティホール
富山公演:2022年1月15日(土)・16日(日) @オーバード・ホール
宮城公演:2022年1月19日(水) @東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
青森公演:2022年1月23日(日) @弘前市⺠会館 大ホール
名古屋公演:2022年1月27日(木)@日本特殊陶業市民会館 フォレストホール

撮影/赤松洋太
スタイリング/森田晃嘉
ヘアメイク/小林純子
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
この記事は2021年11月13日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。