相手のペースに飲まれての契約変更で本当にいいのか


ただでさえ保険というものは、もしもの事態を前提にした商品なので、それにどう備えるか検討するのは、ワクワクと胸躍る作業ではない。もしもの事態をシミュレーションするうちに、気持ちがどんどん重く暗くなってくるし、担当者が帰った後は、どんな長時間の打ち合わせよりも疲れたと感じる。

しかし、今回のモヤモヤ感の出どころは、そうした神経や体の疲れとはまた別のところにあるように感じた。わたしはいったい何に納得していないのか。頭のなかで時計を巻き戻し、考えてみた。

すっきりと美しい小川さんの自宅リビング。

そもそも今回の訪問の目的は、数日前にそのべテラン生保レディから電話がかかってきて、「契約中の保険に関して、ある書類の確認とサインが必要なので、ちょっと寄らせてください」と言われたのだった。その時点で「新しいプランへの変更を提案したい」という話はしていなかった。 

 

わたしは忙しいのと、また滞在が長くなるのを警戒して「時間はどれくらいかかるでしょうか?」とたずねた。すると、「あら、お出かけのご予定があるんでしたら、別の日でも」と生保レディ。「いえ、出かけはしませんが、締め切り前なんです。でも、早めに済ませたいので日にちは変更しないほうがありがたいんです」と返すと、「そうですねぇ......30分もあれば」。 

ところが、当日は話がすべて終わってみれば、また2時間が経っていた。後半わたしが意識的に「巻き」に入らなければ、もっと長引いたかもしれない。けっして感じの悪い人ではない。むしろ、感じはとってもいい。しかし、書類にサインだけ(これ自体はものの10分で済んだ)のはずが、結果的に相手のペースに飲まれて契約内容の変更という展開になっていたことに、後から「果たしてこれでよかったのだろうか?」と疑問がむくむくとふくらんでくる。 

数日後、実家で母にこの件を話してみた。じっくり話しているうち、ネット保険まで含めれば、母が保険選びをした時代より選択肢がずっと豊富な現在、必ずしもわたしにとって最適な相手ではないのかもしれないね、という結論に至った。そこで、先日交わしてしまった契約は、まだクーリングオフ期間だったため一旦取り消し、元のプランに戻した。そしてすぐに、保険会社自体を変えることも含め、今度は母を頼らず自分で保険の見直しをすることにした。まずはネットで生命保険の基礎知識や各種オプションの特徴を理解し、駅前にある「ほけんの窓口」にも相談してみようと思う。 

今まで勧められるままに「はいはい」とハンコを押してきた身としては、ほとんど一から勉強するのと同じであり、やはり胸躍る作業ではない。けれど大人としてやらなければいけないことで、その時期がきたのだ、と今さらながら思った。