もはや見逃せない違和感にきちんと向き合う


とにかくそんな釈然としない思いを年2回ずつ、10年も積み重ねてきてしまった夏、とうとう決意は固まった。
親方から「明日の午後に剪定に行きます」と急に電話が来て、翌日午後1時に来たと思ったら、1時間半後には「もう終わりましたんで、次がありますんで」とさっさと帰ってしまったのだ。いつもの所要時間の半分も経っておらず、こちらは 3時のお茶休憩に出す和菓子を、わざわざその日の朝に買いに行ったというのに。まぁ、それはこちらが勝手にやったことではあるにせよ。
 
たしかに猛暑だ。ずっと雨続きだったからスケジュールが立て込み、 実際にあともう1軒、予定を入れたのだろう。パッと見るかぎり、わかりやすい手抜きも見あたらない。けれど、さすがにそのとき「もう庭師さん、変えよう」と決心した。

うちにあるのは古い庭木ばかりだから、しっかりと技術のある庭師さんにお願いしたいし、その点では条件をクリアする相手ではあった。でもやっぱり、もっとちゃんとコミュニケーションがとりたい。保険の話がだらだら長引くのはイヤだけど、大切な庭について何の会話もなく事務的に作業されて、そそくさと切り上げられてしまうのもイヤだ。こちらとしては、彼らの仕事に感謝しながらお金を払い、「今後ともよろしくお願いします」と爽やかな気持ちで送り出したいのである。

 
最近は生ゴミのコンポストから堆肥を作り、庭木を育てている。

保険会社も造園業者も、どちらもわたしが30代のころ、家族や家を持つ自覚がまだぼんやりしていたときに、親に勧められるまま付き合いはじめた相手だ。自分で探して選んだ相手ではない。

 

10年というタイミングで、もはや見過ごせないほど大きくなってきた違和感について、ここらでちゃんと向き合ってみようと決めた。
 

(この記事は、小川奈緒著 『ただいま見直し中』から一部抜粋・改変したものです)

『ただいま見直し中』
著・小川奈緒
技術評論社

これまでの習慣や思い込み――お金の感覚、モノの持ち方、大切なことの優先順位、 40代の終わりを迎える著者が日々の違和感に向き合い手がかりを探っていく、爽快で心地よいエッセイ 。
日曜の晩酌をやめてみたら/おしゃれの優先順位/防災は続くよ、どこまでも/携帯料金で浮いた8千円について/ブログの毎日更新をやめた理由/アラフィフ、断食に挑戦する/メルカリへの感謝状/得意なもので勝負するetc.


撮影/キッチンミノル
構成/松崎育子(編集部)

 

 

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