天才ピアニストに、
人間の潜在能力の目覚めを学ぶ

写真:PhotoXPress/アフロ

私はこういう時、いつも盲目のピアニスト、辻井伸行さんに思いを馳せます。ピアノが弾ける人ほど、彼のテクニックは奇跡であると証言します。超絶技巧を要する曲でもミスタッチが全くないこと、当然のことながらすべて暗譜であること。それは、視覚を奪われたことによって別の感覚がとてつもない進化を見せた証拠ではないでしょうか。

 

人間の潜在能力は98%が眠っている……エセ科学という見方もあるこの説をも、どこかで信じたい気持ちになります。人間は私たち自身が考えてる以上に素晴らしい能力を持っていて、時にそれが理屈を超えた計り知れない結果をもたらすことを、信じてみたくなるのです。

特に重要な力を失った時に、それを補う別の力が目覚ましい能力を発揮する、それは天才ピアニストでなくても、私たちが年齢的に何かを失ったときにすら、起こりうること。体の中で勝手にそれを補う機能が目を覚ましても不思議ではないのです。

そもそも、閉経によって「女が女でなくなる」的な概念は、全く以て昔のもの。昭和40年代まで日本人の平均寿命は60代そこそこでした。それこそ、閉経後は“余生”と呼ぶしかないような寿命だったのです。
今はどうでしょう。40年近くも寿命が伸び、人生100年なら、人生の半分は閉経後と言うことになります。人生の半分も、“何かが終わった状態”ではあまりに残念すぎる。でも実際には何も終わりません。

逆に言えば、何かが終わるとばかり思っていた私たちが、それ以前よりも安定した健康を得たからこそ、まるで新しい命を得て、そこから何かが始まるような喜びさえ感じたのです。