「大人はいいもんだぞ」と胸を張って言える親父でありたい


――今回のレシピ本は「家族」がテーマでもありますが、笠原さんがご自身と家族のために大切にしていることはありますか?

子育てに関してはカミさんに託されたぶん、僕がしっかり守っていかなければという責任は感じています。子どもたちの結婚式には、僕だけでも出席しないと可哀想でしょう。そのためにも、長生きはしないといけないなって。だから、自分の健康のためというより、子どもたちのために「人間ドック」は半年に1回は行ってますね。

――年1回じゃなく、半年に1回ですか。

僕の場合、お袋も親父も、カミさんもがんで亡くしてるからね。みんなもっと早く病院に行っていれば早期発見で治療できたはずなんです。僕まで同じ目に遭ったら、子どもたちから「こいつ何を学習したんだ?」って思われちゃうからさ。せっかく両親やカミさんが身を持って教えてくれたんだから、同じ轍を踏まないように、子どもたちが悲しい思いをしないように長生きしてやろうっていうのは、ずっとありますよね。

 

――ちなみに、亡くなられたお父様も笠原さんと同じく料理人ですが、家族のために料理することもあったのでしょうか。

よく作ってくれました。それに僕の実家は親父がやってた「とり将」という店でもあったから、料理する親父を見て育ったようなものなんです。子どもながらに「仕事をしてお金を稼ぐって大変なんだな」とは身に染みて感じたけれど、働く親父の背中はやっぱり格好よかったよね。僕自身も、そういうことを子どもたちに感じてもらえたらなと思ってます。だから仕事には精を出すし、仕事がつまらないとか、今日仕事に行きたくないとか、そういう愚痴は家では一切言わないようにしていて。「親父は仕事が楽しくてしょうがないんだ!」って見せつけたいんですよ。じゃないと、子どもたちだって「大人になんてなりたくない」ってなるでしょう。

 

――反省しきりです。確かに子どもたちは、大人の愚痴に敏感ですよね。

僕だって、当然仕事の仲間と集まったり、同世代の飲み仲間と飲んでいたら愚痴も言いますよ。でも、やっぱり子どもや若い世代の前では、そういう姿を見せたくないんです。僕が親父の背中から学んだように、格好いい姿を見せて、「大人はいいもんだぞ」って言い続けて、子どもたちに「早く大人になりてえなあ」って思わせるような親父でありたいですよね。

 
 

『笠原将弘のまかないみたいな自宅飯』
著者:笠原将弘 主婦の友社 1595円(税込)

メディアでも大活躍の「賛否両論」の店主・笠原将弘さんが、家族のために作っている「自宅飯」を初公開! 食べたいものを食べる笠原家のスタイルは、作る人が疲れない、食べる人も気負いしない、日々の暮らしに寄り添う料理ばかり。和食、洋食、中華、タイ料理と紹介するレシピのジャンルも実に多彩。料理に添えられた子どもたちとのエピソードに思わず心が温まる、食卓を囲む笠原家の賑やかな声が聞こえてきそうな一冊です。

撮影/吉永和久
取材・文/金澤英恵