逆に早めに受け取り始めると、年金額は減る


一方で、65歳から遅らせるのではなく、65歳より早めに受け取り始めることもできます。これを「繰り上げ」といって、1カ月早めるごとに、0.5%減額されます(2022年4月からは、0.4%の減額)。

例えば、1年早めて、64歳からの受け取りにした場合はどうなるでしょうか。(0.4%×12か月=4.8%で)4.8%の減額です。さらに早く、60歳からの受け取りにした場合は、24%(0.4%×12か月×5年間=24%)の減額です(いずれも、2022年4月以降のケースで計算)。

「いつまで生きるかわからないから、早く受け取ったほうがお得だ」と考える人もいるかもしれません。でも、長生きの時代、老後は思った以上に長いもの。
減った金額のまま、(おめでたいことですが)どんどん長生きした場合に、年金の不足感を覚えるかもしれません。

せっかくなので、「受け取りを遅らせること」を基本に考えることがおすすめです。
60歳や65歳以降、さらに70歳くらいまで、仕事や趣味によるプチ収入など、何かしらの収入を得られるようにしておけるとベター。
貯蓄も準備しておくことで、年金を受け取らなくてもしばらく生活できる状態を目指すのです。仕事や趣味で老後の生き生き感も味わえますし、その後受け取る年金が増えるという楽しみもありますよね。

書籍『はじめての積立投資・つみたてNISA・iDeCoもよくわかる! お金の増やし方』(主婦の友社)にて、年金の増え方・減り方についても図解で説明しておりますので、よろしかったらお手に取っていただけますと嬉しいです。

 


年金を遅らせる場合は、途中で変えることもできる


「70歳や75歳まで、年金の受け取りを遅らせるつもりだったけれど、事情が変わって早めに受け取りたくなった!」ということもあるでしょう。

老後に思ったような収入を得られなかったり、病気をしてお金がないと心配になったり、急に住宅のリフォーム費用が必要になったりと、さまざまなケースが考えられます。

また、「ずっと遅らせて、68歳になったけれど、やっぱり今までの分を受け取りたい」というケースもあるでしょう。

その場合でも、大丈夫です。「やっぱり70歳ではなく、68歳の今から受け取り始める」「今は受け取らないまま68歳になったけれど、65歳にさかのぼって、本来受け取るはずだった年金をまとめて受け取りたい」ということもできます。

そう考えると、年金は比較的自由度の高い制度です。個人のその時の事情に合わせていろいろな選択肢があることがわかれば、老後の不安が、少し軽くなるのではないでしょうか。まずは「年金は、遅らせて受け取ることで金額が増えること」を、頭の片隅にちょっと入れておいてください。

『はじめての積立投資・つみたてNISA・iDeCoもよくわかる! お金の増やし方』
著者:西山美紀 主婦の友社 定価1300円(税別)
ISBN 978-4074470891

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文/西山美紀
構成/片岡千晶

 


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