新型コロナウイルスの影響も後押しし、ここ数年で人々のライフスタイルの変化に拍車がかかってきています。旅行に行けないから都会と田舎の二拠点生活を始めてみた、都市部に通う必要がなくなったから郊外に引っ越した、あるいは在宅勤務で自宅が手狭になったことで新たに仕事の拠点を構えたという人もいるでしょう。そろそろ暮らしを変えてみようかな。何となくそう思い立ち、行動に移す人たちも少なくありません。そこで本連載では、ここ数年で生活の拠点を変えた方々に話を伺っていきます。見えてきたのは、“拠点を変えた”という事実を超えた“考え方の変化”でした。


自宅が好きだからこそ、仕事場にしたくなかった


最初に紹介するのは、ミモレの編集次長でブランドマネージャーを務めるバタやんこと川端里恵。共働き夫婦のリモートワークをきっかけに自分の仕事場を探し始めたといいます。

 

「最初は軽い気持ちからでした。自宅で仕事をすることが増えてきて、夫が家に帰ってくると“帰ってきちゃった……”と思うようになってしまって。本来家に帰ってくることはいいことなのに、そう思うなんて良くないじゃないですか。

 

私は人一倍自宅が好きで、読書や映画を観るのが好きなインドアタイプ。郊外移住したい欲はあまりなくて、自宅から近くに仕事だけできるスペースが欲しかった。立場上厳しいことを言わざるを得ないポジションでもあるので、仕事モードで発した言葉やモヤモヤした気持ちが大好きな自宅に漂い続けるのが嫌だったんです。拠点を1つ増やすと金銭的な負担はもちろん増えますが、どんなもんかとりあえず試してみようという気持ちで借りてみました」

3階建てアパートの最上階にある21平米/1K(5畳の洋室1間+2畳のロフト)の仕事部屋。この部屋を気に入ったポイントは、斜めの天井と剥き出しのコンクリの壁。屋根裏部屋のように狭くてほどよく暗く、読書に向いてそうだと思ったのだそう。


光が安定した北向きの部屋は仕事場にピッタリ


新たな拠点を見つけたのは2021年3月のこと。ちょうど大学生のオンライン授業が定着し、都内で一人暮らしをする必要がなくなった学生が次々と部屋を引き払ったことで、空き物件は比較的多かったといいます。軽い気持ちで不動産屋に向かったところ、「ここ数ヶ月で仕事場を借りる会社員の方が本当に増えました」と言われたのだそう。“ああ、みんなそうなんだ”。そんな気持ちも後押しして、自宅から自転車で通える距離のアパートを契約します。

天井の一番低い部分は、身長151cmでも頭がついてしまうほど。

「最初に気に入った部屋は、仕事場としての契約はNGということで見送りました。その一方で、オフィス利用だからこそマッチする物件も多くて。契約したのは、北向きの少し薄暗い部屋。居住用としては好まれませんが、光が安定している北向きの部屋は仕事場にはピッタリでした。それから、生活の拠点にするつもりはなかったので、キッチンもお風呂もベランダもなくていいと思って探しました。

家賃を抑える方法としては、住むには不便だけどオフィス利用なら気にならないことを不動産屋さんに伝えて、一緒に探してもらうのが効率的ですよね。また、先に確認すれば良かったことは、Wi-Fi環境。結果的にこの部屋は無料で使える高速Wi-Fiが通っていたので良かったですが、自分で手配するとなると手間も月額コストもかかることを想定していませんでした」

部屋にはパソコンデスクと椅子、本棚が1つだけ。この部屋で料理をすることはほとんどなく、コーヒーメーカーとIHコンロだけは置き、ラーメンを作ったり買ってきたものを温めたりはするそう。
 
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