「わらじ」が見せてくれた新しい景色


「瑛子、最終的にはね、他人の仕事を手伝うよりも、小さくても自分のビジネスをしたほうが面白いよ」

経営者である祖父は、幼い頃から私に繰り返しそう言っていました。昔は今ひとつその意味がわからず、そんなものかな、くらいに思っていました。

その本当の意味は、会社の休みの日に『The Crafted GINZA』に立ったとき、びりびりと雷に打たれたように実感することになります。

 

このプロジェクトには、弟と従兄弟、スタッフとして妹、何より実家の繊維商社とのコラボレーションですから、大好きな人がてんこ盛りです。

そんなメンバーで知恵を絞り、自分が本当にいいと思う製品を、戦略を立てて広報し、イベントを企画していく。自分のアイディア次第です。

 

これが自分のビジネスだ、祖父が言っていたのはこの手ごたえなんだ、と思い当たりました。

二足のわらじが、いつのまにか私をこんなに遠くに運んできてくれたのです。

好きな人たちと、「いい」と思うものを世に出す。スキルを活かし、自由に生きる。

夢物語だと思っていた世界が、いつのまにか広がっていました。ああ、私が求めているのはお金持ちになることや、組織で出世していくことじゃない。もっとシンプルで、等身大のもの。


副業が、人生を理想の形に引き寄せた瞬間でした。


もうすぐ、私はお世話になった広告会社を辞め、独立します。

これからは、『The Crafted GINZA』を店長として運営しつつ、実家の事業のリブランディング、そして新規事業を展開していく予定です。夢は大きく、起業してスキーやヨガなどのスポーツウエアやグッズを開発したい。そしてまずは2022年冬、ワールドパラスキー世界大会と北京オリンピックに通訳として帯同します! そのために通訳の学校にも通い始めました。

こんなにパラキャリアでワクワクする未来なんて、毎日泣いていた頃にはまったく見えませんでした。ここまで来られたのは、とにかく運と人に恵まれていたから。

そしてそれを前提として、もし皆さんにお伝えできる秘訣があるとすれば、自分の内側から目を逸らさないこと

幸せって、天井がないし、物質的なことで言えばキリがない。理想の仕事や働き方って、どこかにある仕事じゃなくて、今あるものを織り合わせて、手繰り寄せていけばきっと出会える。そのためには、まず自分の心をよく見ること。そしてまずは一歩、踏み出すこと。

意外なところにお仕事のタネが落ちてるんじゃないかと思います。

皆さまにも、ぴったりのわらじが見つかりますように。

 

深井瑛子さん
1988年生まれ、大阪府出身。中学からインターナショナルスクールに進学、高校1年時にアメリカ・インディアナ州に留学。慶應義塾大学総合政策部卒。
現在は広告会社に勤務するかたわら、独立に向けての準備として実家の事業を展開し、『The Crafted GINZA』を運営。来年から独立し、日本パラスキー代表チームの広報・通訳として世界大会に帯同予定。
Instagram: @vitamin_kiki
Twitter: @vitamin_kiki
TikTok: @vitamin_kiki

取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
写真提供/深井瑛子さん
 

 


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