自分を押し殺して続けていた結婚生活


きっかけは、アメリカ駐在中に私の両親が立て続けに亡くなってしまったこと。もちろん精神的なショックも大きかったですが、何度も日本とアメリカを往復して、肉体的にも限界でした。

さらには、何か悪いことをしたわけではないのに、「親の体調が悪い時に、私はそばにいられなかった」という罪悪感も重なり、つねに塞ぎ込んでしまう鬱状態が続いたんです。ちょうど夫の仕事もものすごく忙しくなり、あまり家にもいない時期でした。

その頃から喧嘩が多くなり、夫婦の関係があからさまに悪くなっていましたね。

アメリカでの海外生活もそれなりに大変でしたが、甘えることが苦手な私と、口下手な夫。自分が頑張れば頑張るほど夫のことが頼りなく思えて、夫婦で助け合えない状況が続いて……。

次第に、海外で自分だけ取り残されて行くような孤独な気持ちになり、どんどんネガティブな精神状態になっていったんです。

離婚が頭をよぎり、「もしかしたら帰国したら別れるかもなあ……」と考えるようになりました。

実際帰国してからは、やっぱりもう一度頑張ってみようと思い直しました。でも激しい喧嘩などの争いごとも絶えないし、関係を改善しようと必死で頑張っても、話し合いになかなか応じてもらえなくて。気づいたら、もう夫のことが受け入れられなくなっていたんですよね。

帰国後しばらくしてから、アメリカ滞在中にも経験した鬱っぽい状態にもう一度陥ってしまったんです。

その時にハッと気付いたのが、「結婚生活が鬱の原因なんじゃないか」ということ。無理をして結婚生活を維持しようとしているために、限界がきているのかもしれないと思いました。

そうはいっても16年間も続けた夫婦生活を終えるのは、とても勇気がいることです。だからこそ自分の気持ちに蓋をして気づかぬふりを続けていた。

でも、結婚を維持するために自分を押し殺して、我慢し続けるような生き方はしたくないと思い、夫に離婚を切り出しました。

 


専業主婦からの脱却


その頃の私は仕事をしておらず、専業主婦でした。でも気づいたら私の周りには専業主婦がほとんどいなかったんですよね。

 

海外駐在生活は8年に及びましたが、その8年間で、日本における女性の社会進出の状況が大きく変わっていたんです。昔は全く違ったのに、女性が正社員として働き続けるのも当たり前だという世の中になっていました。

最初は、知り合いの紹介でワイン販売のアルバイトを始めました。もともとワインエキスパートの資格を持っていたことがきっかけです。しかし不定期でフルタイムの安定した職ではありません。

働いていた頃の貯蓄や、退社した時の退職金にほとんど手をつけていなかったこともあり、ひっ迫した状況ではなかったので、最初はそんな感じでゆるく働いていました。

そんな中、私に「のんびりしてないで、月〜金で仕事しなよ!」とお尻を叩いてくれたのが、料理教室のメンバーたち。

帰国後にブログを読んだことがきっかけで、料理研究家のスヌ子さんの料理教室に通っていたんです。

そこにいたのは、編集系の仕事をバリバリこなしている女性たちでした。専業主婦は私だけで、最初は会話すらついていけなかったほど。

彼女たちは、とにかくテンポが早いのと、なんでもズバッと口にするタイプ。ある夜、皆で飲んだ時に「何甘いこと言ってるの! とにかく仕事するべきだよ」と口々に言われて、私自身も刺激を受けたんです。

その流れで、「ちょうど社員を探している知り合いがいたから、聞いてあげる」と言われて。それで数日後に思い切って面接にいき、すぐに仕事が決まったのが現在働いているサカキラボです。離婚して3ヶ月後のことでした。