職業ライターに必要な資質とは?

『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)より

さとゆみ:意外に思われるかもしれませんが、レベル②の「わかりやすい」までができたらプロのライターとして及第点です。ライターに必要な資質の8割は「誰にでもわかりやすく書くこと」。残りの2割はセンスや才能と呼ばれる部分ですが、職業ライターとしてはわかりやすく書けることこそが圧倒的に大事。

それさえクリアしていれば、ライターとして食べていけます。これは、私自身が年80本以上取材をされたり立ち会ったりして、ライターさんからいただいた原稿を見て実感したこと。取材中に得た情報の核を捉えて、誰にでもわかりやすく読みやすい文章にできる人って、プロの中でも貴重だったんですよ。

 

バタやん:才能って言われるより希望が持てますね。私も文章力は説明力が8割だと思っています。この連載のタイトルを「センスも文才もなくていい」としたのはそのためです。それから視点の意識も大切。たとえば、編集部の若手の子に記事を書かせると、文章に「私」を入れてしまいがちなんです。なんでもエッセイ風になってしまう。これを避けるためには、まず「作家」と「ライター」の区別が大切です。

さとゆみ:そこ、大事です、私もめちゃめちゃ意識して原稿を書いてます。自分の中にテーマがあり、著者の意見・作品として出すのが作家。小説家や脚本家、エッセイストですね。一方、取材などで得た情報や事象を、テーマに沿って分かりやすい文章で記事にするのがライターです。著者として自分が出る必然性があるかどうかを、いつも考えています。この記事は「ヘアの専門家の佐藤友美」として知見を書くのか、あるいは取材で得た情報を、ライターとして情報を伝えるのか。

バタやん:佐藤さんは、その書き分けのプロ。自在ですよね。同じ媒体の中でも、記事によって書き分けてらして、ライターに徹している記事と、ミモレの連載『さとゆみの「ドラマな女たち」ヘア&メイクcheck』のように髪型に専門性のある著者さとゆみとして書いていただいているものもある。

さとゆみ:私、書き手としては器用な方かもしれないです(笑)。著者として記事を書く場合は、専門性や必然性が重要ですので、意図的に専門家としての意見を入れるように意識しています。
ライターとして書くか、自分の意見を書くか、最終的に自分がどちらの仕事を目指したいのかは、書いているうちに見えてくると思います。両方手掛けることもできると思います。

 

バタやん:そうですね、一口に書き手志望と言っても、ご自身の中に書きたいテーマが明確にある方と、自分の中に伝えたいことがあるというより、取材して文章にして伝えることが楽しいタイプの方もいます。こういう方はいわゆる職業ライターに向いていると思います。


さとゆみ:そう! だからこそライターは、取材やインタビューが好きであることが大切。目の前のこと、相手、事象に深く興味を持って理解し、文章にすることが仕事ですから。