空き家期間に賃貸していても3,000万円特別控除は受けられる


マイホームを売却したときに売却益が出ると、所得税などの課税対象になります。この所得税の課税対象となる売却益のことを「譲渡所得」と呼びますが、譲渡所得は控除や特例によって税負担を軽減することが可能です。今回紹介した3,000万円特別控除とは、自宅(居住用財産)を売ったとき、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例のこと。譲渡所得は以下のような計算式で出すことができます。

売却代金-取得価格-譲渡費用-3,000万円=譲渡所得

マイホームを売却してから老人ホームに入ったり、加奈子さん一家のようにいつでも戻れる状態で自宅が維持管理されていた場合は、老人ホームの入居期間の長短を問わず、自宅として認めてもらえる可能性があります。また、加奈子さんの実家は3年近く空き家でしたが、その間の建物の用途は問われないため、貸家として第三者に賃貸していても良いという決まりもあるのです。

なお、自宅の名義が夫単独であれば夫しか3,000万円特別控除は使えませんが、夫婦2人の名義になっていれば夫婦それぞれが3,000万円特別控除の適用を受けられます。そのため、もし夫婦一緒に老人ホームに入居するのであれば、夫から妻へ建物持分をいくらか贈与しておくという対策も効果的。ただし相当な額で自宅が売却できないとこちらは使えないので、状況に応じて考えてみると良いかもしれません。

 


空き家を持ち続けることで発生する固定資産税という負担


親の老人ホーム入居と同時に実家が空き家になる場合、不動産の取り扱いは大問題になることもあります。賃貸契約をしたり身内が住んで活用できれば良いのですが、すんなり事が進むケースばかりではありません。また、介護状態になっても特別養護老人ホームなどの公的施設に入れず、入居時費用や月額利用料が予想外に高い老人ホームに入居せざるを得なくなり、自宅を売却して入居一時金にする人も増えています。以下に紹介するのは有料老人ホームの料金の一例ですが、パッと見ただけでもかなりのコストがかかることがわかりますよね。

東京都荒川区 A有料老人ホームの例
入居時費用:0~3,839万円
月額利用料:225,900~1,112,680円

神奈川県横浜市 B有料老人ホームの例
入居時費用:0~700万円
月額利用料:289,700~389,700円

また、空き家とはいえ固定資産税は当然毎年かかりますし、マンションの場合は管理費や修繕積立費も取られてしまうので、誰も住まない家に「なんでここまで?」という気持ちも芽生えるのではないでしょうか。なお、これは実家の売却に限らず、皆さんが今住んでいる自宅の売却時にも使える制度です。「3,000万円特別控除=3年目処に」だけは忘れずに。

写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子

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