運だけではない。地道な努力の末に築いた「二足のわらじ」


結果的に、ジャカルタ駐在中は、次のキャリアの始動準備を存分にすることができました。体も癒えて、不妊治療の結果、なんと子どもを授かることもできました。

嬉しかったのは、駐在中に始めたブログで考案したレシピを発信したところ、現地で話題を呼びフリーペーパーに紹介されたこと。

ブログで当初から決めていたのは、特色を出すために一眼レフで写真にこだわり、見せ方を工夫すること。当時、好きだった『マーサ・スチュワート』の影響で、まず見てくれた人がわくわくするような何かが必要だなと思ったんです。無名の私はまず掴みが大切だなと考えた結果です。

同時にアロマソープの販売も開始しました。まさに二足のわらじですが、自分としてはコンセプトは同じ。ライフスタイルデザイナーとして、ふたつの仕事を少しずつ育てていきました。

手ごたえをつかみ、帰国後は料理教室オープンを目指して調理の専門学校に通いました。子どもを妊娠中でしたが、日本食、フレンチ、イタリアンコースを1年かけて修了。ここは本当に頑張りました!

並行して、人気の料理教室に生徒として足を運び、ひたすら観察です。集客方法、運営方法、スケジュール、広報、レシピ、その教室ならではの特色……。実際にお金を払って体験することで、見習いたいこと、改善したいことがわかり、自分がその仕事をするときのイメージが明確になっていきます。

そして2014年、ついに念願の料理教室をオープン。

初めてのスタジオは、都内のマンションをリノベーションして自宅兼教室に。最初は生徒さんがまったくいませんから(笑)、まずは友達に声をかけ、「練習したいから材料費だけで来てくれない!?」って。

ありがたいことに、次第に口コミで評判が広がっていきました。瞬く間に満席続きの人気教室になったのです。

 

とても驚いたし、なんて幸運だったのかと思います。でも、もしうまくいった理由が運だけでないとすれば、なんでも徹底的に準備する地道な性格が奏功したように思います。

私、ひたすら真面目でコツコツ型なんです(笑)。だからこそ、ノリが重要な音楽プロデューサーを会社員として続けることに限界を感じたんだと思います。あのときポジションを手放すのは勇気がいる決断でした。逃げてるんじゃないかと不安もあって。

それでも心の声に従って進み、ひたすら地道に努力した結果、予想もしない新しい世界に会えた。

料理教室はありがたいことにキャンセル待ち続出の人気教室になり、企業からレシピ作成やコラボレーションのオファーをいただくまでになったのです。

順調そのもの。そんなとき、2020年、コロナ禍が始まり、お料理教室を直撃しました。

 


最終回は、太田さんを襲ったピンチと、逆境の中で展開したもうひとつの仕事について伺います。

 

太田みおさん
料理家・メディカルアロマインストラクター・ライフスタイルデザイナー。1985年生まれ、福岡県出身。幼少期の5年間をアメリカで過ごし、その後高校まで熊本で育つ。早稲田大学第一文学部卒。辻調理師専門学校で日本料理とフランス・イタリア料理を修了。主宰するlifestyle atelier MAGNOLIAでは、料理教室およびアロマ講座を開催中。
Instagram:@otamiojp
lifestyle atelier MAGNOLIA:https://www.lifestyleateliermagnolia.com/

取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
写真提供/太田みおさん
 


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