ジョブ型雇用のもっとも重要なポイントは、仕事に対して賃金を支払うという部分です。注意する必要があるのは、これは成果主義ではないということです。あらかじめ仕事の内容が決まっていて、それができる人材が採用され、賃金も最初から決まっているのがジョブ型雇用です。

日立は職種ごとに必要となるスキルを明示する、いわゆるジョブディスクリプション(職務記述書などとも言われる)を外部にも開示し、社内・社外を問わず同じ条件で人材の評価を行います。この方法は海外では一般的であり、求人の際には、その内容があらかじめ提示され、それに沿った人しか、採用の対象とはなりません。

事前の契約で仕事の内容が決まっていますから、それ以外の仕事をさせることはできませんし、ましてやサービス残業などあり得ないということになります。ジョブ型が普及すれば、いわゆる滅私奉公のような働き方は消滅する可能性が高いでしょう。

しかしながら、ビジネスパーソンにとってジョブ型雇用はメリットばかりではありません。仕事に就く前の段階でスキルと年収が明示されていますから、より高い年収を得たければ、新しいスキルを獲得して、それに合致する職種を探す必要があります。

 

日本型雇用の世界では、がんばって何年間か仕事に励めば、昇給というパターンもあり得ました。しかしジョブ型雇用では、仕事に対してお金が支払われますから、仕事が変わらなければ賃金も同じ水準が続くことになります。

 

諸外国ではステップアップするため、多くのビジネスパーソンが大学などに入り直していますが、彼らは特段、勉強熱心なわけではありません。より高い賃金を得るためには、新しいスキルが必要であり、それを獲得するために大学に入り直しているのです。

つまり、ジョブ型の社会において賃金を上げるためには、明示的に新しいスキルを獲得する必要が出てきます。業務を通じて大きな成果を上げ、それが新しいスキルとして認められるという人は、ごくわずかですから、一般的なビジネスパーソンが年収を上げようと思った時には、何らかの学び直しを求められる可能性が高いでしょう。

政府は近年、生涯教育に関する政策を進めていますが、その背景には、ジョブ型雇用においては常に学び直しが必要という現実があるからです。

いずれにせよ、ジョブ型雇用の世界では、会社に入って漫然と過ごしていればやがて給料が上がるということはあり得ません。昇給しなくてもよいので、淡々と同じ仕事をこなして私生活を重視したいのか、次々とスキルをアップして高い年収を得たいのか、自身のキャリアプランについて明確にする必要があるでしょう。


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