何もかも未経験だった事業が成功した理由とは?

3人の子どもを絶対に学校に通わせたい一心で...。50代の女性が「行列のできるりんご飴」を作るまで_img2
「Candy apple」代官山本店

当初は友人の会社の事業としてやっていましたが、店舗も大きく展開したことで、別会社を立ち上げることになりました。現在は私が代表を務めています。りんご飴の事業がそれだけ大きくなり、かなり忙しくなったので、幼児教室は昨年辞めました。

 

成功した理由は、取締役の友人との出会いが鍵になった、と言えるかもしれませんね。私はそもそも、お金を持っている人たちと一緒にいるのが好きなんです(笑)。例え自分が貧乏だとしても、同じようにお金のない人たちといるより、華やかでパーっと明るく生きている人たちの方が、一緒にいて楽しいので。

自分が本当にお金に苦労している時も、人前では一切その話はしなかったので、今になって話すと驚かれることもあります。

かなり人には恵まれている方だと思います。取締役の友人や、幼児教室を一緒にしてくれた友人をはじめとして、本当に大変な局面でもいつも周りの人に支えられてきたので、なんとかなってきました。

あとは、離婚のときもそうでしたし、母が倒れた後もそうでしたが、何かにつまづきそうになると長男がいつも、「お母さんが幸せならそれが一番だよ。好きな方を選びなよ」と言ってくれるんです。その言葉のおかげで、ここまで来られたのかもしれませんね。

りんご飴の成功は、とにかく運が良かったというのもあります。私って良い時と悪い時の振れ幅が大きいので、友達からは「運が良いのか悪いのかわからないよね」なんて言われるんですけど。メディアの取材やドラマの話が舞い込んできたのは、本当に運が良かったです。

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よく「経験がないから自分にはできない……」と尻込みしてしまう人がいますが、経験がないからこそ新しい視点を持てるという強みがあります。

飲食業界もりんご飴も、何もかもが初めての経験でした。だから百貨店の催事などで、衛生上のルールなども全くわかっておらず、最初は怒られてばかり(笑)。

「なんで帽子かぶってないんですか!?」と怒られて、驚いて慌ててスタッフ分の帽子を買いに走ったり、「ネイルはダメですよ!」と叱られたり……。百貨店で教わったことが山ほどあります。

りんご飴を始める前は、飲食のプロの知人全員から反対されたんです。心配してくれてのことでしたが「絶対うまくいかないよ」と一斉に言われて。うまくいく! と信じていたのは未経験の私や友人だけで、「とりあえず3年やってみて、ダメなら潔くやめよう」という気持ちで始めました。そこからまさか8店舗まで広がるとは思いませんでしたが……。

とにかく「子どもたちを学校に通わせなきゃ」という一心で、ここまでやってきました。ほとんど意地でしたね。でも子どもたちからは、「究極の状態まで追い詰められていなければ、ここまではやれなかったかもね」なんて言われたりします(笑)。

これからは、りんご飴だけでなく、ロールケーキなど新しい商品の開発も予定しています。あとは、店舗を持たない形でやっていく方法を模索していきたいと思っています。



元夫の事故と離婚により、3人の子どもを抱えるシングルマザーとなった西野さんが、りんご飴専門店カフェを大成功させるまでの経緯を紹介しました。

成功を掴むことができたのは、もちろん西野さんのとびぬけた発想力やセンス、運の強さがあってのことだとは思いますが、苦境に立たされてもポジティブに行動する性格がチャンスを掴んだとも言えます。

また、50代で未経験の世界に果敢に挑戦する姿にもパワーをもらいました。そして何より感じたのは、子どもたちへの深い愛。人は、どうしても守らなくてはならないものができたとき、どんな困難にも立ち向かい、乗り越えていくのかもしれません。

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取材・文/小澤サチエ
構成/山本理沙
写真提供/西野好砂さん

 


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