違和感に気づき、自分の好きを分解し解像度を上げる


高校中退後、早くに結婚した相手からDVを受けていた工場勤務の女性スーザン。
彼女はある日、仕事帰りにあるコンサートに感銘を受け「私いつかスタッフとしてこのステージに関わる」と、誓うともなく思います。

音楽好きの彼女を毎日けなす夫の元を去ると決めたスーザンは、どう学び、働き、生きるか、自分自身に適したフィットする選択をするチャンスを得ました。そこで彼女がやったのは、自分の中にあるいくつもの「小さなモチベーション」をすべて検討してみること。

人を支え世話をするのは好き、独学でもさみしくならずに努力できる、音楽が好きだけど歌うことにも楽器の演奏にも興味はない。装置や電気器具をいじって仕組みを確かめるのが好き、物がどう機能するかを把握することが好き、ひとりでもくもくと複雑な作業を正確にする仕事は苦ではない、学校に通うだけのお金はない、など、自分の資質や持っているものをすべて棚卸ししたのです。

“そして気づいたの。録音スタジオにある装置の担当者になれたら、私はとっても楽しめるんじゃないかって。ミュージシャンを裏方で支えながら装置を扱えるんだもの“
-『Dark Horse「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』より-


プロの音響技師になる道を探すと決心した彼女は、正規のルート(学校に通う)ではなく、音響技師の学校で受付の仕事を始めます。そこで生徒や先生の会話から情報や知識をストックしながら独学で学びを重ね、自分が音楽の世界で働くためには何が必要で何が足りないのか、自分に何が向いているのかを観察し、自分にフィットした戦略を考え続けたのです。

そしてある見習い募集を知り応募。採用され働きだしたスーザンはその後もフィットと違和感を大事に行動を繰り返し、ついには自分の魂が揺さぶられるミュージシャン、プリンスの専属技師に抜擢され、信頼を得て大きなライブでの録音技師をつとめます。

その後も目的意識を持って行動し自身の小さなモチベーションを進化させ続けたスーザンは、40歳を前に大学に入学。自分の探求心を追求する道を選び、最終的には大学の教授になります。

スーザンの歩んだ道は彼女だけにフィットするオリジナルの道。そのまま真似することはできませんが、大事なのは考え方や行動指針といったそのエッセンスです。
どんな環境に身を置いていようと、ほぼ毎日変わらない状況の中にあろうと、まずはその状況について、自分が好きなこと、嫌いなことに注目し、自分が充足感を感じることの解像度を上げることが大切なのです。

 


“通行手形”がなくても「幸せな成功」は手に入る


今までの成功モデルでは入れなかった場所に、今の時代って逆の意味で入りやすい面があると思います。それはきっと「どんな教育を受けてどう成功するか」という尺度で「誰かと比較して勝つ」ことが求められた時代から、「どのように人生を自分なりの充足感をもって生きていくか」が大切な時代へと変わってきているから。
よい学校、よい企業といった“いわゆる通行手形“が、まだあるにはあるけれど、少しずつ変化してきている。この時代の変化が、ダークホースたちの背中を後押ししています。

すぐには自分の中の「小さなモチベーション」を見つけられないし言語化できない、すぐにはうまくフィットする仕事を見つけられないという人も多いかもしれません。
そんな人も、この本を読むことで、自分を縛っていた固定観念やモヤモヤを認識し、自分の生き方について気づきを得られると思うのです。

まずは、なにか外的な尺度で「こうしたほうがいい」と決めていることがあるならそれは手放し、その上で、自分の違和感と「小さなモチベーション」を大事にしてフィットする場所をずっと考え行動し続けることが大事。

どのように人生を自分なりの充足感を持って生きていくか。
少しずつ、勇気をもって動きながら考えてみようと思える一冊です。
 

文/勝俣智美

 

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