――こういう服を作りたい、というイメージはずっと温めていたんですか? どれもシンプルで心地良さそうだけど上品さがあって、大人の女性にはうれしいアイテムばかりですよね。

 

もともとスタンダードで普遍的なアイテムに自分らしくエッセンスを入れる、というファッションが好きで。だから、私の好きなベーシックアイテムが中心です。
でも一番のこだわりは、リラックス感と心地よさ。デザインの“好き”も大事だけど、歳をとると煩わしい服って着たくないじゃないですか(笑)。
だからスカートもウエストはゴムにしていたり。だけどツヤッとした素材感で、温かみや上品さを出すなど、小さな工夫をこらしています。

 


――スタートしてから半年以上が経ちました。発売と同時に完売になる商品も多く、順調に進んでいるように見えますが、いかがですか?

始めてみて一番感じたのは、「服を作るのってめちゃくちゃ大変だな!」ということです。ただ“好き”というのとは大違い。細かくプランを立てて始めていたらもっと違ったのかもしれませんけど、いかんせん「えい!」で始めてしまったから。

たとえば工場とのやり取り一つとっても、私にとっては、「嘘でしょ!?」みたいなことだらけで。「今からこの生地でこの枚数作るとしたら納品は3月です」と言われて「え、普通に間に合わない!」とか、ざっくりニットが好きでデザインしたものの、実際に編むと重さでビヨ~ンと長く仕上がってきたとか。
もうそんなことの連続で、毎日モヤモヤしています(笑)。

――今後、ブランドをどう育てていきたい、と思われているんでしょう?

アパレルに関しては初心者なので、まだまだ分からないことだらけです。生地の発注や、実際どれくらいの枚数を作るか、そういう見通しもうまく立てられなかったり、失敗もたくさんあります。
でも、やってみなかったら知らなかったことの連続で、そういう意味では面白さも感じています。手探りながらも学んでいって、細く長く続けられたらいいな、と思っています。

このブランドを運営するにあたって、私を突き動かしているものは、今まで自分の中には存在しなかった「ポジティブ」な発想なんですよ。
コロナで仕事がすべてストップしたとき、役者って無力だなと痛感して。役者は、役や台詞を与えてもらって、初めて動き出せる仕事だから、与えてもらえなければ何もできないと思っていたんです。

だから、このブランドをスタートさせるとき、大袈裟ではなく、生まれてはじめて能動的に動き出した自分に感動して(笑)。
ファッションって誰かのためではなく、自分のためにあるもの。お気に入りのワンピースを着るとき、初めておろす靴を玄関にならべたとき、心がぶわん! と上がりませんか?
流行に左右されず、自分だけの「好き」を持つことって人生が豊かさが広がるから、そんなお手伝いができたら幸せだなと思います。
 

撮影/田中恒太郎
ヘアメイク/伴まどか
取材・文/山本奈緒子
構成/片岡千晶(編集部)
 


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