――忙しい松田が消臭剤をシュッとしてから着替える身支度のシーンからも、仕事に没頭している彼女のキャラクターや暮らしぶりが伝わってきました。

あれは私が考えたことなんです。電動歯ブラシにさせて、とも言ったと思います。
実はあの身支度のシーンは2時間くらい撮ったのですが、20秒くらいになっていて。何かが伝わったのならよかったです(笑)。

服もおしゃれではないし、いつもヒールがない靴を履いていて、もしも今度こういう役を演じるときには、ヒールがなくても歩きやすい靴を自分で準備して持って行こう、と思います。

――社会派のエンターテイメント作品はまだ日本では少ないジャンルですよね。出演することに躊躇はありませんでしたか?

それはなかったです。ミモレの連載でもお話ししたことがあるように、私はもともと実話をベースにした社会派の映画やドキュメンタリーがすごく好きなんですよね。
そういう作品で、しかもNetflixのドラマに出られるのであればぜひやってみたい、と。あくまでも作り手の方たちがいて、私はいただいた役を演じきるだけ、という気持ちでした。それに私よりも、組織側の悪者を演じる役者さんや自殺した官僚の妻を演じた寺島しのぶさんのほうが大変だったのではないかと思います。

――寺島さんとの共演についてもお聞かせください。

 

久しぶりにお会いしたら以前よりも柔らかい雰囲気になっていらして、ふたりで体調のことをお話ししたりしました。夫を亡くして泣くシーンも、のどが痛くなるほどテイクを重ねて、夫を演じた吉岡秀隆さんは、その声が耳に残って寝られなかったそうなんです。
なのにできあがった映像は無音だったから、みなさん平等につらい現場だったと思います。

いろいろな映画やドラマ、舞台に出ている寺島さんとご一緒できて、役者としても勉強になりましたね。自分ももう少し泥まみれになってみよう、と刺激をいただきました。

 

――綾野剛さん、横浜流星さんとの共演はいかがでしたか。

横浜流星さんは監督と仲が良くて、話し方も似ているんです。これまでも作品を一緒につくってきて、いろいろなことを語り合ってきたんでしょうね。
横浜さんが演じる大学生の日常のシーンがあるからこそ、観る方が自分の生活とリンクさせやすいドラマになったのではないかと思います。

綾野剛さんは……、間違いなく綾野剛さんでした(笑)。ご一緒して、本当にお芝居が好きなんだろうな、と思いましたね。何回もテイクを重ねて入り込んでいく方だと思うので、監督との相性もぴったりなのだと思います。

米倉さんもすっかり藤井組の一員になった

――新たな挑戦を重ねた『新聞記者』が配信され、話題を呼んでいる今の心境を教えてください。

こういう役は、苦しすぎて二度とできないと思います。
でも悔しいことがたくさんあったから、監督とこのチームと一緒にもう一回やってみたい。『ドクターX』のカメラマンとは『黒革の手帖』から15年くらい一緒にやっているので、どんな動きがほしいのかがわかるんですね。でも今回は初めての方だから、ほしい動きとは違うことをしてしまったかな、自分の癖が出てしまったかな、申し訳ないな……、という気持ちになることも多くて。

もしもまた呼んでいただけるのであれば、監督の現場がどんなものがわかったうえでエネルギーをコントロールして、自分のことに集中してリベンジしてみたいです。

<ドラマ紹介>

Netflixシリーズ『新聞記者』

 

2019年6月に劇場公開され、大きな話題を呼んだ映画『新聞記者』。この度、米倉涼子を主演に迎え、新たな物語であるNetflixオリジナルシリーズ『新聞記者』が誕生。映画版とは違ったアプローチで、さらに深く、刺激的に現代社会の問題に迫る。報道に対して強い信念をもち、政府の汚職を暴こうとする新聞記者・松田・巨大な権力の圧力に屈することなく、真実を暴くことができるのか?

取材・文/細谷美香

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