英国の名門パブリックスクールの姉妹校が、日本に次々と進出しています。今年の8月にはハロウ校が岩手県に、2023年にはラクビー校が開校するのですが、学費は高いところでは何と年間1000万円近くもします。こうした学校には誰が通うのでしょうか。

最近では多少、薄れてきたとも言われますが、英国は今でも階級社会であり、出身の階級(クラス)によって通う学校が明確に分かれています。パブリックスクールというのは、主に上流階級の子弟が通う学校で、たいていが全寮制学校(ボーディングスクール)です。

パブリックスクールの中でも、イートン校、ハロウ校、ラクビー校といった学校は特に有名で、全世界にその名前が知られています。イートン校はウィリアム王子やハリー王子など英国王室の子弟が通っていますし、ハロウ校はチャーチルを筆頭に何人もの首相を輩出しました。宥和政策で知られるチェンバレン首相はラクビー校の出身です(ジョンソン現首相はイートン校を卒業しました)。

イートン校に入学してすぐのウィリアム王子(1995年当時)。写真:AP/アフロ

同じくヘンリー王子(1998年当時)。写真:ロイター/アフロ

一方、上流階級ではないものの、成績が優秀な生徒が通う進学校としてはグラマースクールがあります。日本では階級は消滅していますから、パブリックスクールに該当する学校は存在しませんが、英国のグラマースクールは、日本における公立進学校に近い存在と考えればよいでしょう。

 

グラマースクールの卒業生としては、サッチャー元首相やメイ前首相が有名です。英国はパブリックスクールを卒業した上流階級出身者と、グラマースクールを卒業した庶民出身の実力秀才たちが、共にケンブリッジ大学やオックスフォード大学に進学し、いわゆるエリート層を形成する仕組みになっています。

このところ、日本に相次いで進出しているのは、上級階級出身者が多く通うパブリックスクールなのですが、名門校で全寮制ということもあり、学費は目が飛び出るような高さです。

例えばハロウ校の姉妹校であるハロウ安比ジャパン(岩手県)は、11歳から18歳までの7年制で、最上級生の学費は何と年間927万円もします。ラクビー校は通学も可能で、学費も少し安くなると予想されていますが、日本の感覚ではかなりの高額であることは間違いありません。

日本にいながらにして英国の名門パブリックスクールの姉妹校に通えるわけですから、お金のある人にとっては、惜しくない金額なのかもしれません。とはいえ、日本の経済水準に照らし合わせると、誰が通うのだろうかという疑問が湧いてくると同時に、本当に生徒を集められるのだろうかと余計な心配をしてしまいます。

開校予定の段階ですから最終的にどうなるのかは分かりませんが、多くの関係者が、高額な学費であっても生徒は十分に集まると考えているようです。その理由は、日本を含むアジア地域には、中国人を筆頭にいくらでも学費を出す富裕層がたくさん存在しているからです。

 
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