ハロウ校はすでに、北京、香港、上海、深セン、バンコクなど中国本土を中心にアジア各国に姉妹校を開校しており、これらの学校を運営しているのは香港の企業です。ラクビー校もすでにバンコクに開校しており、アジアでは日本が2番目となります。

学費は年間1000万円!英国の名門パブリックスクールが次々日本進出、どんな家の子が通うのか_img0
校内を歩くラグビー校の生徒たち。写真:ロイター/アフロ

日本には国際的に通用するボーディングスクールはほとんど存在していませんから、日本にビジネス目的で滞在している裕福な中国人や東南アジア人にとって、子どもの教育は大きな悩みの種でした。中国やタイで実績のある英国名門校の姉妹校が日本にあれば、彼らは喜んで子弟を通わせるはずです。

 

このようなことを書くと少し気分を害する人がいるかもしれませんが、今、日本に滞在しているアジアの富裕層は、1980年代にアジア各国に駐在していた日本のエリートビジネスマンに近い状況と考えてよいでしょう。

当時、アジアに赴任した人たちにとって最大の問題は子どもの教育でした。現地には、日本人の子どもを受け入れ、進学校の教育をしてくれる学校は存在しておらず、やむを得ず、家族バラバラで単身赴任する人も少なくありませんでした。今や日本とアジアの関係は完全に逆転し、日本の方が教育環境が整っていない国になってしまったのです。

中国や東南アジアの富裕層に加え、グローバルな名門校に子どもを通わせたいと考える日本の富裕層を加えれば、相応の生徒数を確保できると予想されます。

それにしても、上級階級向けの名門校を中国と提携してアジア展開する英国と中国の戦略はしたたかです。アジア各地の有力者の子弟を受け入れれば、卒業生はやがて各国で要職に就き、英国とのパイプ役になるのは確実でしょう。中国は中国で、10年後には卒業生がアジア全域で強固なネットワークを構築しているはずです。

日本でもバブル時代までは、多くの優秀なアジア人が日本への留学を希望していました。日本の名門大学の一定割合を留学生にする案や、日本の名門学校をアジアに進出させる案なども議論されましたが、「なぜわざわざ外国人を入学させるのか?」といった反対意見が多く、ほとんどが実現しませんでした。当時の日本は今とは異なり、経済力がありましたから、国家をあげてこうした戦略を実施していれば、日本の立ち位置も、今とは違ったものになっていたかもしれません。


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