「当事者ではない自分」に気まずさを感じたことも


「女性たちの自由で多様な生き方・働き方を実現したい!」「日本の働き方をもっと自由で多様なものにしたい!」そんな想いとともに起業したわけですけれど、事業をスタートした当初は戸惑うこともありました。

フリーランスとして働きたい女性たちと企業との仕事のマッチング事業を軸に始めたこともあり、サービス開始当初の登録者は30〜40代のママさんが中心。一方、その頃の私はまだ結婚しておらず、子どももいませんでした。

サービス利用者から「田中さんもお子さんがいらっしゃるんですか?」と聞かれることも多く、そのたびにどこか気まずい気持ちになっていたんです。

今考えると、全然そんなことを感じる必要はなかったんですけどね。社会課題の解決って、課題を感じている当事者自身だけじゃなく、そうでない属性の人も含めてみんなでやっていく必要があるし、そのほうが社会全体を変えていく力になっていきますから。

 

今でもママさんはご登録者の過半数以上を占めますが、以前に比べると20代が増えたり、男性も一部いらしたりと、多様な方に利用していただいています。

会社のほうは創業して今年で10年目に入ります。サービスのご登録者は2万人以上。フリーランスマッチングの事業だけではなく、離職女性の再就職支援事業や、女性役員の紹介事業など事業の幅も広がってきました。

昨今の「働き方改革」や、コロナ禍による影響もあり、フリーランスや副業・兼業、リモートワークが一般的になってきて10年前と比べて時代の移り変わりに驚くばかりです。

でも事業を始めたころと想いは一緒。「Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。」というビジョンを掲げています。

 

個人のキャリアの8割は「偶然」で決まる


私が大好きなキャリア理論に「計画された偶発性理論」があります。米国スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱したもので、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とされています。

「利他的キャリア」と言われると、ひょっとしたら耳慣れず難しく感じるかもしれません。でも難しく考える必要はないんです。綿密にプランニングして自分が定めたゴールを目指すばかりがキャリアではなくて、周囲との出会いや縁を大切にしながら行動していくうちに切り拓かれるキャリアもある、ということ。私の場合もそうでした。初めから行き先が決まっていたわけではありません。

会社をやめてフリーランスになったときはワクワクと同時に不安もありました。けれど、自分の意思とは関係なく生まれてくる偶然の出会いや流れを大事にしているうちに自然と道ができていきました。

キャリアをつくっていくときに、そんな「利他的視点」を取り入れてみてもいいかもしれません。みなさんのキャリアを振り返るとどんな道ができているでしょうか?

前回記事「好きを仕事にしなくていい。誰かのために働く「利他的キャリア」のすすめ」はこちら>>