「部下の自我を芽生えさせたくない」耳を疑った経営陣の言葉


そのような中でも、社員が現場の仕事や今後のキャリアで悩む姿は、人事部員としてやはり気になります。

湯浅さんは現状を少しでも変えるきっかけになればと、「キャリア形成を考える研修」や「希望すれば異動ができる制度」を先日開かれた経営会議で提案したのだそうです。

「今はいろいろな企業でキャリア形成支援に関する動きが出てきているので、自社でもきっと何かやれるはずだと期待していたのですが……」

 

その会議に参加する部長や役員から返ってきたのは、耳を疑うような言葉の数々でした。

「ある役員の発言には、本当に驚きました。『俺がずっと育ててきた社員に、異動もアリだと思わせるのか? 俺はあいつを手放したくない。そんな提案には反対だ』って言われて」

社員の自律的なキャリア形成は、自分の陣地を荒らす行為だと捉えている。湯浅さんは上層部の言葉にそんな意識を感じ、衝撃を受けたと言います。経営会議での衝撃発言は、さらに続きます。

「きわめつけだったのが、ある部長の『もしも転職したくなったら困る。部下の自我を芽生えさせたくない』という言葉でした。社員を完全に子ども扱いしているんですよ。正直、うちの会社が全く変化できずにいるのは『そういうとこだぞ』って思ってしまいました」

会社が抱えるさまざまな課題を解決するためには、マネジメント層の意識改革が急務なことも多いのです。