「社会人失格」の私が、まさかの……!?


その少し前に海外のレミゼに新演出版と呼ばれるバージョンが登場、2013年の日本公演はその初演でした。オタクな私はもちろん、その「新演出版」をすでに2度、海外で見ていました。

おそらくそこを買っていただいたのでしょう。なんと、大挙して来日した演出担当などの海外スタッフ全員にインタビューするという予想外の大役をいただけることになりました。

さらには、オタクな私が心の中で神とあがめる世界的演劇プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ氏も来日することに。多忙なマッキントッシュ氏が日本に来るなど、めったにない機会です。さすがにこれは私じゃなく、演劇評論家と対談、あるいは重鎮と呼ばれるベテランライターさんの仕事になるだろうと思っていたのですが......信じられないことに、私が担当することになったのです。

インタビュー当日も、どうにも実感がわきません。あのレミゼを製作した「神」が本当にここに来るの? という感じです。

インタビューは1時間の予定でした。でも先方の打ち合わせが長引いてしまい、20分となったため、内心動揺しましたけれど、さすがマッキントッシュ氏。たった20分でもたっぷり中身のつまった話をしてくださいました。

「神」が自分に向かって、レミゼのことを話しているという状況は、さすがに普段は低体温気味な私も、感慨深く、忘れられない体験です。

 

おかげさまでそれ以来、レミゼのパンフはずっと書かせていただいています。

 

あの時恐れ多いと思いつつ、本当に頑張ってよかった。フリーとしては駆け出しの、レミゼ愛だけで来た私に、仕事を振ってくださった方々に感謝しています。

もっとも、ライター人生の最終目標みたいな方のインタビューが初っ端から叶ってしまって、その後はもはや余生みたいな気持ちになることも(笑)。パンフに寄稿したというだけで、レミゼの「内部」の人間になったわけではないので、幼い頃に描いた「関わる」という目標が叶ったかどうかは微妙なところですが。

それでも「社会人失格」だった私が近付けるギリギリの距離までは到達できたのかな、という気はしています。