「表現力に自信ない」「表現力がもっとあれば」……ライティング講座でそんなお悩みをよく聞きます。言葉にして人に伝える「表現力」は、文章を生業にする人に限らず、日常生活や仕事のあらゆるシーンにおいて大事なコミュニケーションスキルですね。今回は、表現力とは何か、豊かな表現力を身につける方法について解説します。形容する言葉を増やす簡単なレッスンをご紹介しますので、ぜひ紙とペン、時計をご用意ください。

 
 


表現力はあるかないかじゃなく、使うか使わないか


「表現」とは

「内面的・主観的なものを外面的・感性的にとらえられる手段・形式によって伝達しようとすること」
(『新明解国語辞典』より)

とあります。つまり、「表現力」とは、伝達しようとする力のことになります。表現の手段には、身ぶり手ぶりや音楽、絵画、造形などさまざまなものがあります。言葉による表現も含めて、なんとなく「アーティスティックなこと」「センスや芸術性いるもの」というイメージがありませんか。

テキストによる表現にも文芸の世界のように「独自の感性による独創的な表現」が評価されるジャンルもあるにはあるのですが、今回は、ノンフィクションのテキストにおける「表現力」について解説したいと思います。ノンフィクションのテキストとは、事実を伝える目的の文章のこと。商品・サービスを紹介する、リリースを書く、レポートをまとめる、ビジネスメールを書くなどもノンフィクションのテキストと言えますね。

ノンフィクションにおける表現力で大切なのは、理解しやすいこと、正確に伝わることです。誤解や齟齬を生まないことも表現力のひとつ。独特のセンスや芸術性などはいらないんです。むしろ「独創的すぎて言ってる意味がわからない表現」だと困ってしまいます。

「〜〜さんは表現力がある」「私は表現力がなくて」と「ある・ない」で比べがちですが、私は表現力がない人なんかいなくて、たまたま今使ってないだけと思っています。

表現力は語学やスポーツと一緒で、使わなければ忘れていくし、筋肉のように使わないと硬くなって、使える可動域が狭くなってしまうんです。

 

義務教育レベルの英単語でも、とっさには出てこず、聞けば「ああ、そんな簡単な単語なら知ってた」ってなることありますよね。表現力も同じで、そんな簡単な言い回しなら知ってたって思うレベルの語彙力でいいんです。

今どのくらい表現力の筋力があるか、可動域があるか、一緒に試してみましょう。