マイナスをどう捉えるかで、その先の人生が変わる

光あるところには影が生まれるのが人生。そうした華々しい活躍の裏側には、常に評価との戦いがありました。

「いちばん辛かったのは、番組が終わるとき。番組が終了するということは、数字(視聴率)が原因のひとつにある。自分はニーズに応えることができなかった。自分の力を出し切ることができなかった。そう悔んだり、自分を責めたこともありました。『いっぷく!』『ビビット』と5年半やっていた帯番組が終わったのが2019年。最後に挨拶をする場があったんですけど、そこで事務所やテレビ局の偉い人の前で言ったんですよ。『この先の目標がまだ見つかっていません』って。当時はそれくらいショックでした」

 

ですが、禍福は糾える縄の如し。そんな挫折が、人生の転機を生むのでした。

「番組が終わると、それまでそこに使っていた時間がボコッと空くことになる。この仕事をしていると、どうしても暇ができると焦るんですけど、そこでこの空白の時間をポジティブに捉えることにした。今まで忙しくてまったくやれていなかったインプットに使おうと考え方を切り替えたんですね」

すると、世界の見え方ががらりと変わりました。

「現代アートにふれてみたり、いろんな建築物を見に行ったり。この時間を無駄にしちゃいけないと思って、興味のあるところへどんどん足を運びました。そこで改めてものづくりの素晴らしさを知ったり、職人さんのすごさを実感したり。あのとき、たくさんのものを見て、吸収して、心を動かした時間が、会社をやろうというアイデアにつながっているところはありますね」

 

いくつになっても、どんなときでも、人生を輝かせるのは好奇心。そうやって好奇心の赴くままにインプットした知識や教養が思わぬ形で実を結ぶのがキャリアなのです。

「この4月から、ジャパネットたかたさんの運営するBSチャンネルで新番組をやらせてもらっていますが、それも企画書から全部自分で書きました。ジャパネットさんが大切にしている『今を生きる楽しさを!』『いいモノだけを選びまセンカ?』という2つのワードを軸に、大人の趣味を全力で楽しむ番組をつくろうと。たとえば、僕は腕時計が大好きなんですけど、一流ブランドの腕時計ってすごく高いですよね。どうしてこんなに高いのか。その理由をとことん調べて番組の中で紹介する。まさに僕の大好きなことや、職人の技術を伝えるのにぴったりの番組になるんじゃないかなと思っています」

年齢を重ねた分だけ可能性が狭まり、チャンスは若い人に流れていくと思いがち。けれど、国分さんは年齢を重ねた今だからこそ味わえるキャリアの醍醐味を実感しています。

「若いうちは周りから打席を用意してもらって、そこで自分なりにできることをやるので精一杯。でも僕らくらいの年齢になると、自分で楽しいと思えるものを見つけてこないと何も面白くないんですよ。今回、自分で企画書を書いたのも、この年になったら誰かに全部お膳立てしてもらうのではなく、自分が参加して、みんなでつくっていくスタイルにしないと面白くないと思ったから。僕は40代なんてまだまだこれからだと思ってる。人生は楽しいものではなく、楽しむもの。気力や体力が衰えると言われる40代だからこそ、自分から楽しんでいく姿勢がもっと必要になってくるんじゃないかな」