「更年期のせいだと思ったら違う病気だった...」不定愁訴にひそむ、さまざまなリスク_img1
 

「これ以外にも、フェムゾーンの不快感や尿漏れ、さらには、脂質異常症、高血圧、骨粗鬆所、脳梗塞、認知症などにも、女性ホルモン低下による後期(閉経後3年以降)の影響であることがわかっています。

病気のデパートと言えるほど更年期症状はありますが、更年期のせいと決めつけてしまうと、似たような症状の他の疾患を見落とす恐れがあります。実際、私の女性医療専門クリニックでは、更年期症状を訴えて受診した4人に1の方に、他の病気が見つかりました。なかでも一番多かった病気は内分泌疾患です」

更年期の女性が他の病気にならないという保証はもちろんないのです。

 


要注意! 更年期症状と甲状腺機能異常症状はとても似ている


「内分泌とはホルモンのことです。卵巣、甲状腺、副腎などいろいろな臓器から分泌され、体内環境を整えています。最近は脂肪や腸管からも分泌されることがわかってきています。また、脳下垂体から分泌されるホルモンは、各臓器のホルモン分泌の司令塔の役割も。もしもお悩みの症状の原因が、他の臓器や脳の障害よるものであれば、それに応じた治療が必要です。更年期障害と思っていたら、白血病、悪性脳腫瘍、貧血と思わぬ疾患に辿り着くケースも稀にあります」

関口先生の外来では、更年期障害だと思って訪れた患者の15%は他の原因がありました。一番多いのは甲状腺機能障害です。甲状腺は、首の真ん中ののど仏のすぐ下にある臓器で、脳下垂体からでる甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって、甲状腺ホルモンを分泌しています。脈拍数や体温、自律神経の働きがあるホルモンです。

甲状腺の病気はおもに二つあります。
・甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
・甲状腺機能が低下する(橋本病など)

更年期世代から特に増えてくるのは、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる橋本病を含む甲状腺機能低下症です。女性の10人に1人はその素因を持っていると言われていて、加齢と共に発症頻度は高くなります。

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「甲状腺機能障害の症状は、疲れやすい、うつ、気力低下など、更年期障害と類似点がとても多いです。たとえば、甲状腺機能低下症では本来は寒気が強くなるのですが、更年期障害の最初の兆候は、ホットフラッシュです。のぼせとともに冷えも強く感じます。コレステロール値も更年期には上昇しますが、甲状腺機能低下症でも同様に上がります。混在する症状から原因を鑑別していくのは、医者といえども簡単ではありません」

ひとつひとつの症状を一般外来で鑑別するには時間の余裕がない現状も課題です。