島の暮らしが少しだけ華やげば

橋の上から見た大島の景色。まるでクロアチアのドゥブロブニクのよう!

コロナの影響で今年の10月に延期になりましたが、周辺地域の飲食店やショップに声を掛け、30店舗近くを集めた「レモン通りの日曜日」という島のマルシェも計画していました。

 


「最近酒販免許が取れたので、近々自宅で自然派ワインの店を始めて、島の人たちや旅行者にワインを販売する予定です。空き家の入手も考えていて、そろそろ料理人向けにゲストハウスも立ち上げたいなと。

移住のタイミングで夫と2人で法人を立ち上げていて、夫はシステム系の案件のほか、ドローンスクールやドローン活用支援を行っています。さらに自分で農業もしたいと言い出して……。かといって資本は限られているので、今はセルフリノベしてゲストハウスを作りたい私と、みかんの樹を200本植えてビニールハウスを建てたい夫との間で意見が割れているところですけど(笑)。

いずれにしても、お互い何かの事業で大儲けをしようとかいうことは一切なくて、島が少しだけ華やげばいいなと思いながら、やりたいことを1つ1つ実験しつつ暮らしている感じです。欲を言えば、人が集まる灯りになればと法人名に“ライトハウス”を入れたのですが、2人法人なのにそんなに多角化したら灯台どころか船山に上るだろうっていつも思ってます」

近所に購入した農地では、ニワトリを飼ったり不知火を育てたり、すっかり田舎暮らしを満喫しています。


観光客と旅先の人がつながれば地方も変わる


鷲尾さんは今、“来た・食べた・買った”という日本の旅のスタイルが少しでも変わるといいなと思いながら、ここでの暮らしや今後のことを考えています。

「日本の旅がもっと旅先の人とつながれるようなものになれば、行く側も受け入れる側も豊かになって、日本の地方感も変わるんじゃないかと。そんな淡い期待を抱いています。今は生きていくための仕事と地域と関わる時間を両立させようとしていて、後者の方はまだ利益は求めていませんが、将来的には2つが一緒になるのが理想です。

デスクワークで得たお金を今後の事業に投資するつもりが、移住した感を出したくてデスクワークの合間にクラウドファンディングの手伝いや小さなイベントをやったりして、結果将来のための時間が作れないという……。3年いてもあまり進展していないので、息子にもそろそろ今年は……って言われるほどですけど(笑)」

ある時は、今治のYoga Studio &me主催の島ヨガイベントを、自宅のウッドデッキで開催。


普通のサラリーマンが移住したっていい


最後に「移住する」ということについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「移住する人って、昔だったらヒッピーだったりすごくロハスな人だったり、少し前だと丁寧な暮らしをしている人、というイメージが少なからずありますよね。今はさらにクリエイティブな仕事をしている人が増えていて、実際、島の移住者の多くはクリエイターや手仕事ができる方たちです。でも私のように、手に職もないごく普通のサラリーマン的な人が移住してもいいんだよということを伝えられれば嬉しいなと。都会の生活を引きずっていても暮らすことはできますし、クリエイティブでもロハスでなくても生活できるんだよって、声を大にして言いたいですね」

 
 
 


大島で出会うさまざまな景色
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次回は島根県の北、日本海に浮かぶ隠岐諸島に移住した方の話をお届けします。
 

撮影/鷲尾ユミ
取材・文・構成/井手朋子

 


前回記事「海の目の前に移住。沖縄でも、小豆島でもなく、しまなみに決めた理由」>>

 
 
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