年金を受け取っている人でも、一定の収入がある場合、厚生年金を減額する仕組みがあり、60〜64歳では、賃金と年金の合計額が月額28万円を超えると年金が減らされていました。今後は、基準額が47万円となるので、この範囲であれば、働いていても減額されずに年金を受け取ることができます(65歳以上については以前からの基準値である47万円が継続)。

一連の制度改正は、受給開始年齢の引き上げと、働きながら年金をもらいやすくするという内容ですから、高齢者にも積極的に働いてもらい、できるだけ年金をもらう時期を後にして欲しいという政府からのメッセージと捉えることができるでしょう。皆さんよくご存知のように、日本の公的年金は現役世代の人口減少や政府の財政悪化によって、厳しい状況となっています。仕組み上、年金制度が破綻することはありませんが、今後、年金は大幅に減額される可能性が高いと予想されます。

写真:Shutterstock

以前のように年金だけで老後を過ごすというのは、富裕層以外はほぼ不可能ですから、今後はできるだけ長く働き、年金は勤労収入を補う存在との位置付けにならなざるを得ません。公的年金がそのような仕組みにシフトしている以上、個人の年金であるiDeCoも、同じ基準が適用されるという流れで今回の改正が行われました。

 

最終的にいつ年金を受け取るのが良いのかは、個人の財政状況によって変わってきます。少なくともiDeCoについては、運用期間が長いほど、積み立てた金額の総額が大きくなりますから、給付面でより有利になるのは間違いありません。

公的年金やiDeCoの改正について、よく「いつ受け取りを開始するのが有利ですか?」といった質問を受けるのですが、有利不利では考えない方がよいと筆者は考えます。というのも、この問題は、いつ自分が死ぬのかによって結果が大きく変わってくるからです。

少々、不謹慎な話になりますが、単純に言ってしまうと、元気に長生きできるのなら後からもらった方がトクで、早く亡くなってしまうのであれば、先にもらった方がトクというのがこの質問の答えになります。

しかしながら、遠い将来のことを今から予想するのは不可能ですし、ましてや自分がいつ死ぬのかなど、考えても分かることではありません。それに、いつ死ぬのかということばかり考えて人生設計をするのは、あまり健康的とはいえないと思います。

詳細な計画を立てる必要はありませんが、年金事情が厳しいのは事実ですから、できるだけ長く現役で働くことを前提にライフプランを考えた方がよいでしょう。
 

 


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