『流浪の月』(2022年5月13日公開)

本屋大賞を受賞した凪良ゆうの小説を、『悪人』『怒り』の李相日監督が映画化。

雨の夕方の公園で、びしょ濡れの10歳の更紗(白鳥玉季)に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文(松坂桃李)。父を亡くし、母が再婚して伯母の家で暮らす更紗は、とある事情から「帰りたくない」と言い、文は彼女を家に入れる。二人が過ごした2か月は「女児誘拐事件」と呼ばれ、文は逮捕されてしまった。15年の年月を経て、二人は再会するが、更紗(広瀬すず)には亮(横浜流星)、文には谷(多部未華子)という恋人がいて……というストーリー。

©2022「流浪の月」製作委員会

二人が過ごした2か月の、本人たちとそれ以外の人たちとの解釈が全く異なることに驚きます。文が何か悪い気持ちで更紗を騙したというようなことは全くなく、二人にとってかけがえない時間だったのに、外からは「女児誘拐事件」と見られてしまう。ここまで真実がゆがめられるものなのかと絶望します。本名を報道された更紗は「女児誘拐の被害に遭ってひどいことをされたかわいそうな子」として扱われ続け、そのことも彼女を苦しめます。

15年経っても変わらない見られ方にひどいなと感じますが、これは二人の立場から見られている作品だから思うことで、もし世の中で同じ出来事が起こったとしたら、自分もその他大勢のように報道を信じて文がひどい人間で更紗がかわいそうな子だと思うんだと思うと、怖いなと感じました。

主演の二人も素晴らしいですし、今回挑戦だったのではと思うのは、亮を演じた横浜流星さん。かっこいい役が多かった彼ですが、束縛が強くDVをしてしまう役を演じています。正直印象が悪くなるのではというシーンも多いですし、メンタル面でも揺れ動きが激しそう。人間の弱さを演じきったこの役により、彼の演技の幅が広がったように感じました。DVシーンがガッツリあるので、苦手な方は注意したほうがいいかもしれません。

つらいシーンも多いのですが、このうえない純愛ラブストーリーでもあります。更紗と文の絆にも注目して観ていたただきたい作品です。

 


3作とも、ぜひ映画館で観てほしい作品


ご紹介した3作品、それぞれ別のベクトルで面白かったので、気になったものがあればぜひ劇場に足を運んでみてください。それぞれ映画館の大画面だからこそ感じられるものがあると思います。そして気に入ったら、ぜひ監督の別作品もチェックしていただきたいです!
 

 


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