車の中は、ウォームアップもクールダウンもできる場所


『Q』の初演は2019年、3年経過しました。この3年で松さんも変わったことがありました。

松:3年という期間は短くもないですよね。だから身体も変わったと思うし、体力は落ちているんだかついているんだかわからない状態で、『Q』の本番までにはしっかりつけたいと思っています。やはり生き生きはしていたいですから。自分の身体がどう変わっていくか認識することと、どうやって変えていくか考えることは、つねに課題です。それを考えることが年々楽しくなっていて。身体っておもしろさを以前よりも強く感じます。

 

ピラティスをしたり、車を使いがちなのでなるべく歩いたりしているという松さん。でも車は車で大事なものなのだそうです。

松:車内での時間は自分にとって大事なものなんですよ。劇場の行き帰りに、ウォームアップもクールダウンもできる場所です。とくにミュージカルだと車がまずウォームアップの時間になるんです。劇場に行くまで声を軽く出しています。車通勤が多いので、付き合いが悪い人と思われているかもしれませんね。終演後、車で帰る時間が現実に戻っていく感じがして好きですね。

 

いいことも悪いことも伝染していくと信じて頑張るしかない


飲み会は参加しなくても現場ではいい関係性を築くことはできる。松さんの考える職場の人間関係調整方法はーー。

松:私はあまり大変なトラブルが山積みな現場に出くわしたことはないですが、芸能界でも会社でも、いろいろな人が集まっている仕事には変わりなく、なかにはコミュニケーションがうまくとれない人もいますよね。そういうときは自分の仕事をとにかく一生懸命するしかないのかなと思います。いろいろなことで悩んで自分のやるべきことがわからなくなってしまうことが一番残念だから。頑なになってもいけないし、まずは、自分の役目はなんだろうと考えて、そして、いいことも悪いことも伝染していくことと信じて頑張るしかない気がします。それと、ひとりで抱え込まないほうがいいとはいえ、ひとりで抱える覚悟をしたほうがいい気もするんですよね。
もし、ひとりで抱え込んで困っている人がいたら、いっしょに馬鹿話するみたいなことをしてみるかもしれないけれど、難しいですね。なにかしたくなってしまう気持ちを抑え、あえて見守ることも必要かなとだんだん思えるようになってきました。大人になってきたのかもしれません。

松さんの「いいことも悪いことも伝染する」という言葉が印象的です。

松:それはもうちっちゃなことなんですよ。緊急事態宣言で、自宅にいないといけない時期、おうちの整理をしようって洋服などを出して整理してたんですよ。でも家族――娘と夫はその時点で乗ってこなくて、ひたすらひとりで整理していたら、じわっとそれぞれが整理しはじめたんですよ(笑)。そのとき、いいことも伝染するんだなって思いました。「これやって」と言葉で言うよりもまず自分が率先してやることが効くのかなって。大きなことーーたとえば世界平和なんて自分ひとりではどうにかできるものではないけど、自分のまわりからきれいにしていったり平和にしていったりすることはできるのかなと思います。

『Q』は海外ツアーもあります。引き裂かれた若き恋人たちを中心に遊び心の詰まった物語が海外でどのように受け止められるか楽しみのひとつという松さん。

松:初演のとき、友人知人が「クイーン、歌うの?」って私に聞いてきて。楽曲はふんだんに使用しています。私は歌いませんが(笑)それくらいのまっさらな気持ちで初演を見てくださったひともいるので、再演でもお客様に楽しんでいただきたいということのみです。それが日本であろうが海外であろうが、演じるうえではなるべく平常心で臨みたいですね。

 
 

松たか子 Takako Matsu
1977年、東京都生まれ。初舞台は93年、歌舞伎座『人情噺文七元結』。翌94年大河ドラマ『花の乱』でテレビドラマデビュー。月9『ロングバケーション』や『HERO 』などヒットドラマに多数出演する。アニメの吹き替えをした『アナと雪の女王』シリーズは大ヒットした。映画『ラストレター』、ドラマ『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』など、舞台は『もっと泣いてよフラッパー』『メトロポリス』『イヌビト〜犬人〜』など多数に出演。歌手としての活動も行う。映画『峠 最後のサムライ』が6月17日公開予定。

ブラウス¥71500、パンツ¥93500/BLAMINK(03-5774-9899) 靴¥118800/JIMMY CHOO(0120-013-700)

<公演情報>
NODA・MAP第25回公演『Q』:A Night At The Kabuki

作・演出:野田秀樹
音楽:QUEEN


イギリスが誇る世界的ロックバンド、クイーンが1975年に発表した傑作アルバム『オペラ座の夜』の世界観とシェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』の“その後の物語“。すれ違って死を迎えるはずの2人が、もしも生きていたら……。
東京・大阪公演に加え、ロンドン、台北を巡り、クイーン×野田秀樹×演劇界最強のドリームメンバーが国内外4都市を巡るワールド・ツアーが実現する。


出演:
松たか子 上川隆也
広瀬すず 志尊淳
橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀
野田秀樹 竹中直人

日程・会場:
●東京公演 7月3日(日) チケット一般発売
公演日程:2022年7月29日(金)―9月11日(日)
場所:東京芸術劇場プレイハウス
●大阪公演 9月10日(土) チケット一般発売
公演日程:2022年10月7日(金)―10月16日(日)
場所:新歌舞伎座
*ロンドン・台北公演あり!

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松たか子さん44歳、包容力とたくらみを含んだ笑顔も
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撮影/塚田亮平
ヘア&メイク/稲垣亮弐
スタイリング/梅山弘子
取材・文/木俣冬
構成/川端里恵(編集部)