年齢を重ねた役を演じることが多くなってきて考えること


宮本:タイトルにもあるけれど、ロケセットの縁側もよかったわよねえ。

映画『メタモルフォーゼの縁側』より©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

芦田:実生活ではなかなか経験したことがないんですが、縁側って雰囲気があってすごくいいですよね。おうちの中でもなく、外とつながっていて日差しを感じられて。この映画では、縁側に並んで腰かけてカレーを食べてる二人を背中から撮った場面が、すごく心に残っています。

 

宮本:自由で開放的で。縁側でなかったら、ああいうつながり方はできなかったと思いますね。

宮本:岡田惠和さん(『ちゅらさん』『ひよっこ』)の脚本には、何気ないけれどすごく深い、胸に響くセリフがたくさんあるんですよ。俳優としては、それをどう消化し自分のものにして、役として出すかを勉強するのが、とてもうれしいんです。子供の頃の小さな後悔を「大事なものは大事にしなきゃだめね」と語る雪さんのセリフなんて、裏の裏の裏には、いっぱい歴史があるんだろうなと。

 

芦田:あのシーンは私もすごく好きです。宮本さんがそのセリフを言われるお芝居も印象に残っています。

宮本:年齢を重ねた役を演じることが多くなってきて考えるのは、その人物がそれまでの人生をどう抱えているか。若い時はそんなこと思わなかったんですけどね。

芦田:私が印象に残っているのは、落ち込んでいたうららが、雪さんに「でも人って思ってもみないふうになるものだからね」と言われた後の場面です。家に帰るときに雨が降っていて傘をかりるんですが、開いたら内側がきれいなバラの花模様で。雨はなんとなくネガティブなイメージだけど、そういう中でも思いがけないいいものが見つかったりする、心にポッと灯がともる感じがすごく。あと雪さんがうららのためにウキウキしながら料理する姿も大好きです。本当に「雪さん」という感じの、お茶目なところですよね。

 

宮本:どれくらい嬉しかったんでしょうねえ。うららさんに会いたくてしょうがなくて、縁側でため息ついて、光石研さん演じるご近所住まいのおじさんに「もしかして恋の悩みとか?」なんて聞かれて。一人の生活だったら、ああいうところはないですよね。うららと知り合って、そういう自分のもともとの性格がパッと出る。雪さんにとってうららがどのくらい影響力があったか。ほんとうにありがとうございます(笑)。