嬉しくて、恋しくて、ふたりの関係は揺るぎない


宮本:うららさんのおかげで、雪さんの孤独だった生活が生き生きと華やぎ、嬉しくて、恋しくてという気持ちが味わえてよかったと思うし、それが一瞬で終わるんじゃなく、続いていくんだよという感じがいいのよね。友情にもいろいろあるけれど、ふたりの関係は揺るぎがないの。距離を縮めて仲良くなったんじゃなく、一定の距離を置いたまま深まった、そういうところが素敵だなって。

芦田:いわゆる友情とは少し違うような気がするんですが、友情より深いものって絶対にあると思います。

 

宮本:この映画は、女の人にいっぱいみてもらいたいんです。女性のいろんな問題が描かれているし、女性のパワーでこの映画を応援してもらえたら、どんなにうれしいかしらって。もちろん、男の人は見ないでいいってことじゃありませんけれど(笑)。

芦田:私はまだ人生経験が浅くて、宮本さんの「女性に見てほしい」という言葉の意味をきちんと理解できているかわからないんですが、うららと雪さんの関係はすごく素敵だなと思うんです。お互いが好きなものでつながっているのがすごくいいし、自信がなかったうららが雪さんとの出会いで生き生きと変わっていく、見た方はきっと「自分のことをもっと認めてあげていい」と背中を押されると思います。「雪さんとうらら」が歌うラストの曲もすごく素敵ですよね。

おふたりで「歌ってください」と言われて


宮本:主題歌を、こういう曲調の歌を歌うのは初めてで(笑)。今でこそ楽しかったと思えるけど、「歌ってください」っておっしゃっていただいたときは晴天の霹靂でしたよ。もしこれで失敗したら、私どう責任をとればいいんですかって。愛菜ちゃんは大丈夫かもしれないけど。

 

芦田:私も最初に聞いたときは、同じ気持ちでした。えええっ! っていう。お芝居が終わったと思ったのに、どうしようって。皆さんにどう受け止めてもらえるのか。

宮本:やっぱりねえ。

芦田:でも自分でいうのもなんですが、「雪さんとうらら」の役として歌ってるのが、いいなとは思って。画面に映る縁側を見ながら歌詞を聞くと、この先もふたりがずっと好きなものを好きでいてくれたらいいな、一緒にいた時間を忘れないでくれたらいいな、この先もお互いに思いあってくれたらいいなとか……上手く言えないけれど、そういうあったかい気持ち、あったかいけどちょっと寂しいような気持ちになれるのがいいなって思いました。

宮本:私は全然。えええ、大丈夫かしら!って思ってますよ(笑)。

 

芦田愛菜
2004年6月23日生まれ。兵庫県出身。5歳で出演したテレビドラマ「Mother」(NTV/10)で脚光を浴び、大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(NHK/11)に出演、「マルモのおきて」(CX/11)では連続ドラマ初主演を務めるほか、主題歌を歌い、第53回日本レコード大賞特別賞を受賞。『ゴースト もういちど抱きしめたい』(10)で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、『うさぎドロップ』(11)と『阪急電車 片道15分の奇跡』(11)で第54回ブルーリボン賞新人賞を史上最年少で受賞、ほか第28回浅草芸能大賞新人賞など多数の賞を受賞。『パシフィック・リム』(13)でハリウッドデビューも果たす。近年では、連続テレビ小説「まんぷく」(NHK/18)で史上最年少で語りを務め、『星の子』(20)に主演、大河ドラマ「麒麟がくる」(NHK/20)で明智光秀の娘・たま役で出演するなど、数々の映画、ドラマ、CMなどで活躍中。

 

宮本信子
1945年生まれ。北海道出身。1963年文学座付属演劇研究所、1964年劇団青芸「三日月の影」(別役実作)で初舞台。1985年『お葬式』で第8回日本アカデミー賞優秀主演女優賞受賞。1988年『マルサの女』ではシカゴ国際映画祭最優秀主演女優賞、第11回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、第61回キネマ旬報主演女優賞など受賞。以降舞台・テレビなど多数出演。JAZZ LIVEに出演するなど歌手としても活動している。近年の出演作は「坊ちゃん」(CX/16)、「奇跡の人」(NHKBSプレミアム/16)、「氷の轍」(ABC/16)、「北斗~ある殺人者の回心~」(WOWOW/17)、「ひよっこ」(NHK/17)、「この世界の片隅に」(TBS/18)、『いちごの唄』(19)、「あの家に暮らす四人の女」(TX/19)、『STAND BY MEドラえもん 2』(20/声の出演)、『キネマの神様』(21)、「春の翼」(NHK/22)などがある。2014年紫綬褒章受章。第76回毎日映画コンクール田中絹代賞受賞。

<芦田愛菜さん着用衣装>
ジャンプスーツ ¥47300/ミントデザインズ ブラウス/スタイリスト私物 靴/スタイリスト私物

<映画紹介>
『メタモルフォーゼの縁側』
2022年6月17日(金)より全国公開

©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

原作:鶴谷香央理「メタモルフォーゼの縁側」(KADOKAWA)
脚本:岡田惠和
監督:狩山俊輔
出演:芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平、古川琴音、生田智子、光石研、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗
プロデューサー:河野英裕、谷戸豊、大倉寛子
©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会


撮影/目黒智子
スタイリング/浜松あゆみ(芦田さん)、石田純子(オフィス・ドゥーエ、宮本さん)
ヘア&メイク/太田瑛絵(ヌーデ、芦田さん)、奥川哲也(dynamic、宮本さん)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)