この2人の例から分かるように、先ほどの決まった「質問」を投げかけなくても、その人が使っている言葉の傾向に耳を傾けることで、その人の判断基準のパターンは推測することができます。

 

さて、面白いのはここからです。外的基準型か、内的基準型かによって、その人の心に響きやすい言葉、「影響言語」が変わってくるのです。有効な影響言語を使えば、相手との距離を縮めることができ、説得や依頼もうまくいきやすくなるため、ビジネスシーンでも大いに役立ちます。具体的に、いくつかのシチュエーションに当てはめてみましょう。

「判断基準」に基づく言葉選び①:部下を動かす

まず、部下に何かの提案や企画を実行してもらいたい場合を考えてみましょう。

外的基準型の部下に響きやすい影響言語は、「この企画は評判がいいから」「○○さんもこの案がいいと言っているから」などの言葉です。その案を進めたい上司(自分)の意見だけでなく、第三者の意見も巻き込んで伝えると、外的基準型の部下に対する説得力が増します。市場調査などの客観的なデータに基づいて勧めるのも、外的基準型の部下には有効です。

一方、内的基準型の部下を動かしやすい影響言語は、「この企画はあなた次第だから」「あなたじゃないとダメだから」「あなたに任せる」といった言葉です。内的基準型の部下は、自分の中に行動を決める強固な判断基準があるので、他の誰かがいいと言っている、という言葉はあまり響きません。あくまでその部下を頼りにし、判断を委ねるスタンスで言葉をかけると、動いてくれやすいのです。

 

「判断基準」に基づく言葉選び②:上司を動かす

次に、上司を説得したい場合はどうでしょう?

外的基準型の上司は、自分の中の基準が弱いので、優柔不断になりがちです。外の意見に振り回されて、言うことがころころ変わってしまう人も。そういった上司を動かすには、「皆の意見はこう」「他の人も賛成している」といった言葉遣いが有効になります。部下同士で事前に意見を合わせたり、他部署に根回しをしたり、上司よりさらに上の人の賛成意見を取り付けて耳打ちしたりすると、決断してくれやすくなるでしょう。

内的基準型の上司は決断が早いですが、ワンマンタイプになりやすく、部下の意見になかなか耳を傾けてくれにくい面も。説得に有効な影響言語は、「この案は、あなたのお考えと合っています」といった言葉。上司の価値観を事前に把握し、それに沿った提案だという理屈をこしらえたり、上司の意見に合わせて提案の一部を修正したり、といった説得法が効きます。