低・中・高スキルの職業分類と3つの生存戦略


「低スキル型」
低スキル型とは、業務内容をマニュアル化しやすい職業領域のこと。
銀行や公務員の窓口業務、定型化された教科書の内容を教える教員、税理士などが当てはまり、学歴不要で簡単な職業ということでは決してありません。

低スキル型の人には、好きを突き詰める退避戦略=AI化やキカイ化が進みづらい職業に退避する戦略が提案されます。
例として登場するのは、「人の役に立ちたい」という子どもの頃からの想いに立ち返り、公務員から整体師へのジョブチェンジをする男性。
自分が本当にやりたいことに立ち戻って仕事を選び直し、「整理された業務を確実にこなす能力に優れ、まじめで忍耐強い」気質を活かしてコツコツ努力し、コミュニケーション能力や丁寧な接客や人柄といった人のぬくもり人間らしさでファンを作っていきます。


「中スキル型」
中スキル型とは、マニュアル化が難しい不定形な内容の仕事で、1つの領域に特化してキャリアを築いている人のこと。
営業・商品企画・エンジニア・デザイナー・マーケティング・財務などの一般的なビジネスパーソンの他、医師などの専門職もここに当てはまります。

中スキル型の人には、いままで培ったシングルスキルの領域を軸足に、別の領域に一歩踏み出し複数領域を横断した職能をもつ越境人材になる「防御戦略」が勧められます。
越境人材とは、たとえば「エンジニアの知見をもった営業」「デザインのことがわかるエンジニア」「テクノロジーもわかる戦略コンサルタント」など、昔からの好きなことや身に付けた素養を使って、かけ算で今までにない価値を提供できる、AIでは替えの効かない人のこと。
例として登場するのは、AIの普及により必要とされるエンジニアの人数や仕事上のやりがいが減った中で失業するエンジニアの男性。
「自分の手を動かし、工夫を凝らして何かを作り、人に喜んでもらうのがうれしい」という自分の想いに立ち返って料理の世界に転身し、エンジニアの素養を活かした分析的思考と創造性を発揮した料理のかけ合わせで本を出版するなどして活躍します。


「高スキル型」
高スキル型とは、すでに2領域以上のスキルを実務に活かし、マルチスキルで仕事を行っている人のこと。
主に起業家や小規模企業の経営陣、領域をずらして転職した人などがここに該当します。

高スキル型の人に勧められるのがAIを味方につける波乗り戦略(=時流に乗れるサービスを作り、波に乗る)。AIの特性を活かして「できること」「やりたいこと」を考え、オリジナルの問いを立てて、新しい価値を新しい角度から生み出すイメージです。

例として登場するのは、「ライブ会場での観客の感情の定量化システム」を開発する元ベンチャー企業社長の女性。
「より多くの人を音楽の力で幸せにしたい」という想いと、「アーティストのよりよいパフォーマンスのためには観客の反応の定量化がフィードバックとして役立つのでは?」という彼女オリジナルの問いを形にして、誰の職も奪うことなく、新しい価値を、新しい角度から生み出します。

 


AIに負けない自分らしさとは


本書に例として登場する人物たちに共通するのは、「自分が本当に好きだったことは何だったのか」「子どもの頃から大切にしていたことは何だったのか」「自分は何をうれしいと思うのか」を振り返り、自分の原点に立ち返る姿勢。

自分がもともと持っていたけれどいつの間にか忘れかけていた「好き」を思い出したり取り戻したりした結果、AIとは違ったモノサシを持って充実感とともに楽しく生きる姿が印象的です。

ひとりひとりの「好き」こそが、きっと、それぞれの価値観や個性や経験を反映した「そのひとらしさ」。
すぐには見つからないし言語化できないという人も、「誰に頼まれなくてもついやってしまうことや考えてしまうこと」の中に、そのひとの「好き」の種や、大切にしたい価値があるのかもしれません。

自分の「好き」ってなんだろう。
今自分の生きる時代と10年後の世界に想像を働かせながら、改めて考えてみませんか。

文/勝俣智美

 

 

前回記事「「自分の選んだ道に自信!」ブレない意見を持つための4ステップ練習法とは」はこちら>>

 
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