コロナ給付金を悪用した詐欺の容疑者が次々と逮捕されています。容疑者の中には国税局職員など公務員も含まれており、非常に悪質です。一連の摘発を受けて、コロナ給付金の手続きを簡素化したことが原因ではないかとの批判も出ていますが、これについてはどう考えればよいのでしょうか。

およそ10億円を騙し取った持続化給付金詐欺事件の主犯格で、警視庁が指名手配していた谷口光弘容疑者。逃亡先のインドネシアで不法滞在の疑いで逮捕され、身柄は近日中にも日本へ移送されるとみられている。写真:AP/アフロ

日本の場合、先進諸外国と異なり行政のIT化が進んでいないという問題があったため、自動的に給付金を計算して対象者に振り込むという、いわゆるプッシュ型の支援が難しいという現実がありました。このため給付金の実施が決められた時には、スピードを優先し、審査を簡略化するという措置が行われました。スピードを最優先すべきだという社会的要請が強く、簡略化が決められたという流れです。

 

手続きを簡略化すると、こうした不正が増えることは以前から予想されていましたが、実際に逮捕者が次々と出てきたことで、簡略化に問題があったのではないかとの声が出ているわけです。

審査の簡略化が、一連の詐欺事件の温床になった可能性は否定できませんが、筆者は仕方のないことだと考えています。IT化が進んでいない日本において、素早く給付を実現するには審査の簡略化が必須要件でした。給付金の対象者は、一刻を争う状況ですから、不正の可能性について議論し始めるとキリがありません。スピードを優先し、仮に不正があった場合、後で摘発するというのは、今の日本においては合理的なやり方です。

結果として今回、多くの容疑者が逮捕されたわけですが、これは行政によるチェックと警察による捜査がうまく機能したと考えるべきでしょう。

しかしながら 日本のIT化が遅れているのは事実であり、本来ならばこうした給付金の手続きはすべて自動化されるべきものです。システム化が進んでいれば、誰(どの事業者)が給付金の対象者になるのか、いくら支払えばよいのかといった確認作業はすべてシステム上で行われ、支払いの手続きも機械的に行われますから、原則として不正の起こりようがありません。

 
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