社会的孤立と孤独感を区別して考える


山田:やはり家庭や、生まれてきたバックグラウンドによりますね。たとえば女性が主に家事をする家庭の場合、男性は女性の家事能力に依存している場合が多いです。そして男性が高齢になり配偶者を失うと、生活の自立が困難となる問題もあります。

 

碓氷:そうした方が診察に来たら、先生の病院ではどのようなアプローチをするのですか?

山田:まずアプローチの前に、区別しなければいけないことがあります。それは、社会的孤立(Social isolation)と、孤独感(Loneliness)の違いです。この2つのどちらに該当するのか、または併存しているのかを見極めなくてはいけません。
社会的孤立というのは、社会的に他者との関係性がほぼない状態です。ただし、社会的孤立には感情との関連がありません。社会的に孤立はしているけれど、好んで一人でいる、そしてその状態に満足していて孤独感がないという場合も十分あり得ます。
一方、孤独感とは、1人でいることに寂しさを感じている状況です。

碓氷:新里さんのご相談の場合、どちらに当てはまりそうですか?

新里:独居でもなく、子供や孫に会う機会も多いので、孤独感を感じているわけではなさそうです。社会的孤立は以前と比べてあるかもしれません。

山田:寂しさを感じていないとすれば精神的には問題ないと捉えることができますが、社会的孤立は、実は様々な形で健康リスクと関連するんですよ。
社会的な孤立があることによって若くして命を落とすリスクが上がったり、運動習慣が失われ、そこから肥満や喫煙という問題に繋がることもあります。コミュニケーションが減り脳へのインプットやアウトプットが少なくなると、認知症のリスクも上がります。

新里:なるほど、気をつけていきたいです。

碓氷:家庭以外のコミュニティを持つ方がよいとは言われますが、コミュニティに参加する方法がわからない場合もありますよね。

山田:そうですね。背景に孤独感があれば心理的なアプローチも大事ですが、現状に満足されている場合、アプローチが難しくなるケースもあります。

ですが、健康のリスクを考えると、社会的な関係性を増やす工夫は必要になってきますよね。