孤独感の健康リスクについて医師が解説


碓氷:よく、「会社の社長は孤独だ」と言われますよね。社会的には孤立していなくても、周りの人と本音で話せず、自分だけで問題を抱えてしまうケースも多いイメージです。

 

山田:そうですね。社会的な孤立がなくても孤独感を抱いている方もいます。孤独感というのは、うつ病の発生や、不安障害と言われる不安な気持ちを頻繁に持ってしまう病気、あるいは自殺率の上昇にも関連すると報告されています。ですので、孤独感は大きな健康問題、健康リスクと捉えられるべきだと思います。

碓氷:ハーバード大学で行われたという75年間の追跡調査を思い出しました。人間の幸福度や健康と直接的に関係があったのは、家柄、学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無ではなく、人間関係だったという調査結果です。

山田:なるほど。高齢になると身内を亡くすなどの喪失体験も多くなり、社会的な孤立が問題になりやすいですよね。
私も高齢者診療をしていますが、社会的に、あるいは精神的な孤立を感じている方と対峙する場面はかなり多いです。
そこで私達ができることは、少なくともアプローチできることがある、ということを知ってもらうことから始まると思っています。さらに個人だけではなく、コミュニティ、社会レベルで何ができるかを考えていくことが非常に重要ですね。

新里:昨日、ファミリーレストランで、高齢の男性4人がとても楽しそうに話をしているのを見かけました。
高齢の男性は集まってお喋りをするイメージがあまりなかったので、個人的には明るく希望のある場面だと思いましたね。

山田:医療機関やNPOでもイベントや地域活動といった取り組みを行う団体がありますが、十分に認知されていないという問題もあります。こうした取り組みをもっと社会で共有し、皆さんの声を届けられるような工夫も重要ですね。

碓氷:豊かな老後を迎えるためには、山田悠史先生の新刊『最高の老後』を読んで勉強するのがよいですね! この本には、医療についてだけではなく、社会的なアプローチや心理的なことまで詳しく書かれていますよね。老化は、色々な要素が複合的に絡み合っているということがよくわかる本でした。

山田:なんだか宣伝みたいになってしまいましたが(笑)、その通りです。老化が起こるメカニズムというのは決して健康問題や病気の話だけでなく、多面的な要素があるということを伝えたかったのです。

碓氷:老化対策は総合格闘技ってことですね!

山田:いえ、そういうわけでは……(笑)。

新里:私も父と一緒に『最高の老後』を読んで、色々な角度から老化について学びたいと思います。本日もありがとうございました!
 

<新刊紹介>
『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』

著:米マウントサイナイ医科大学 米国老年医学専門医 山田悠史
定価:本体1800円(税別)
講談社

6月24日発売 ただいま予約受付中!
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高齢者の2割には病気がないことを知っていますか?
今から備えればまだ間に合うかもしれません。

一方、残りの8割は少なくとも1つ以上の慢性疾患を持ち、今後、高齢者の6人に1人は認知症になるとも言われています。
これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。


写真/shutterstock
構成/新里百合子
 

 


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