「日本の仕組みを変えようとするな」という声の裏側にあるもの


――同性婚を後押しするような活動をすることで、何か心ない言葉とか言われた経験はありますか?

Kan 僕が言われることが多いのは「イギリスで結婚できるなら、日本から出て行けばいい」というものですね。つまりイギリスに行けば結婚できるんだから、わざわざ日本の仕組みを変えようとするな、ということです。結婚できるところに行けばいいだけの話じゃん、と。僕のツイートがたまにバズるとそのぶん批判的な人も増えて、そういった書き込みをされることはありますね。

 

――なんでそんなに仕組みを変えたがらないんでしょう?

Kan 僕の推測でしかないんですけど、そういう意見の根底にあるのは自己責任論なのかなって思います。アナタは辛いのかもしれないけど、世の中そういうものだよ、みんな誰だって辛いことがあるんだよ、というものです。つまり、社会を平等にしていこうという考え方ではなくて、みんな辛いんだし、アナタには外国に行けばそれができるという選択肢があるんだからそれで黙っておきなさい、という考え方なのかもしれません。

僕は自分のセクシュアリティに悩んでいたとき、「自分がおかしいんだ」「自分を変えなきゃいけないんだ」とずっと思っていたんですね。つまり、自分が社会に合わせないといけないと思っていた。だからずっと苦しかったんです。だけど社会って完璧じゃなくて、常にアップデートしていかなければいけないものだと思うんですよ。社会がより平等なほうに向いていくことによって、その制度とは直接には関係ない人たちも、より自分らしく生きられるようになるはず。まわりまわって、自分にも巡ってくることだと思うんです。だから世の中をより平等にする、よりフェアにする、という観点で同性婚のことも見ていただけたら嬉しいなって思います。

 

――社会の価値観を変えるという点では、他人事ではないですよね。

Kan はい。たとえば同性婚の場合って、結婚したらどちらの名字になるんだ?という疑問が生まれますよね。そこから選択的夫婦別姓への議論にもつながっていくとか、いろいろ相互作用があると思っています。同性婚が当たり前になると、結婚だけじゃなく家族の価値観の話にも広がっていくと思うので、そうすると結婚を選ばない人たちにとっても、より自分らしく生きられるような雰囲気が醸成されていくかもしれません。

異性愛者だからといって必ずしも結婚するわけではない人もいるでしょうし、いろんなセクシュアリティの人と恋愛する人だっている。単純に愛し合っている二人であれば結婚できる、という制度があった上でどうするか選べるほうがいいですよね。

――本当にそうですね。お話を伺って、この問題は他人事ではなく自分事としても注目していく必要があると痛感しました。辛い体験も含めていろいろと話してくださり、本当にありがとうございました。

Kanさんの言うように、同性婚に対する立場も、政治家を選ぶ時の判断材料のひとつ。

2022年参議院選挙は、6月22日公示(告示)、7月10日投開票です。不在者投票は公示(告示)日の翌日から投票日前日まで、土曜日、日曜日、祝日にかかわらず毎日、午前8時30分~午後8時まで。期日前投票所が複数設けられる場合、それぞれの期日前投票の間で投票期間や投票時間が異なる場合があります。投票券が手元になくても、投票は可能。ぜひ、皆さん投票へ!

 
日本における同性婚訴訟の現状
2019年2月14日、性別を問わず結婚ができるようになるよう「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まりました。この訴訟は、同性カップルが結婚できないことが憲法違反だと正面から問う、日本で初めての訴訟です。
札幌、東京、名古屋、大阪の裁判所で一斉に提訴された後、2019年9月には福岡の裁判所でも始まっています。また東京では2021年、2次訴訟も始まっています。

現在の状況は以下のとおり。

・札幌 2021年3月17日、「同性同士の婚姻を認めないのは法の下の平等を定める憲法14条に違反する」という判断が下された。しかし他の訴えについては「違憲に当たらない」とされたため、原告はこの判決を不服として棄却、控訴している。

・東京 5月30日に1次訴訟が結審し、11月30日に判決が言い渡される。また現在、2次訴訟もおこなわれている。

・名古屋訴訟中。

・大阪 2022年6月20日に、「同性同士の婚姻を認めないのは法の下の平等を定める憲法14条(法の下の平等)に違反しない」という判断が下された。また、婚姻の目的は「男女が子を産み育てる関係を社会が保護するもの」という発言は物議を醸す結果に。

・福岡 訴訟中。

取材・文/山本奈緒子
構成/坂口彩
 

 

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