相手を思っているようで、自分を守っている


つかこうへいさんの舞台をよく拝見していて、観劇後、お食事をご一緒させて頂くこともありました。
つかさんはいつも、「○○、どうだ? 良かっただろ?」と、出演している俳優さんたちのことを、愛おしそうに話していらっしゃいました。
他の方の舞台はほとんど観に行かれなかったというつかさんが、日テレアナウンサー有志で立ち上げた「福澤一座」を観に来てくださった時には、震えました。

そんなつかさんから突然、「今度うちの舞台に出ませんか。この役にハマる方がどうしても見つからなくて」というメールが台本とともに届いたことがありました。
とっても嬉しく、とっても興味がありましたが、福澤一座と違って、社外の活動。しかも2週間。そもそも演技にも自信がないし、上司を説得する覚悟もない……。

私は、スケジュール的にもきっと無理だ、などと1人で決めつけて、心の中で言い訳をして、上司にダメ元で相談することすらせず、お断りの返信をしました。
上演されたその舞台に、私がお誘いいただいた役はありませんでした。
それから数年後、つかさんは亡くなりました。

江川さんは笑い話となっていますが、つかさんは、後悔してもしきれません。
遠慮とは時に、相手を慮っているようでいて、実は弱い自分を守っているだけなのではないか。自分が傷ついたり恥をかいたりするのが怖いだけで、相手の思いを受け取りもしない、失礼な行為なのではないか。と思うようになりました。

 

それからは、配慮はするけど遠慮はしない。をなるべく心がけています。
基本的には、なるべく、何でも口にしてみることにしています。
知りたいこと、分からないこと、気になることを聞いてみる。
たとえ言葉が拙くてもいいから、自分の勝手な都合で思いを届けることを諦めないように。
聞くのはタダ、話すのもタダ、を合言葉に(笑)。
うまく言葉に表せない時は、ハグしちゃうこともあります。

たとえば打ち合わせで、台本には書かれていない背景や、ディレクターの意図などを、分かった気にならず、確認する。(日常)
何かあった時に、腫れものに触るようによそよそしくなるくらいだったら、土足で踏み込んだり気まずくなったりしないように気遣いながらも、率直に聞く。(これは目標)
レストランで、興味のあるメニューや分からないメニューは、どんどん聞く。ボリュームの相談などもする。(これも日常)
もちろん、混んでいる時は避けたり、長く拘束しないように、配慮はしながら。

遠慮は時に、自分の「ワガママ」につながりかねないですが、配慮のある「ワガママ」ライフで、一期一会を楽しんでいきたいです。

第1回「「寒い」「疲れた」...我慢は他人のためならず。40代からはワガママになろう!」>>

第2回「「人並みに」「らしく」「普通に」生きるって難しい。いつの間にか染み付いてる線引きとは?」>>

 
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