できるだけ他人のままで──夫婦および家族について
 


私とつれあいは結婚するとき、
「できるだけ他人のままで、水臭い夫婦でいよう」と決めました。

──『週刊文春』(文藝春秋)2015年8月13・20日合併号「新・家の履歴書 下重暁子(作家)」より


下重さんは配偶者を「主人」や「夫」ではなく「つれあい」と呼びますが、そこからお二人の独立した関係性を知ることが出来ます。ちなみに、お二人の生活スタイルについてはこのように説明しています。「玄関やバスルームをバリアフリーにして、ずっと一緒だった寝室を別々にした。でも夜中に具合が悪くなったとき助けを呼べるように、ドアは開けて寝るのが決まりです」。

 


ひとりの時間を大事にする人が二人いれば、2倍楽しくなる。
どちらかがどちらかに同化してしまっては魅力がなくなる。

──『PHPカラット』(PHP研究所)2005年4月号「特別寄稿 ひとりを味わえない女に本当の恋愛はできない 文・下重暁子」より

 


夫婦生活は「同化」すると魅力がなくなってしまうと語る下重さんは、同化しない関係性を保つ秘訣をこのように話しています。「二人だからこそ、ひとりを忘れてはならない。一人ひとりが自分の感受性と考え方をもつからこそ、二人で暮らしても、独立を保つことが出来る」。

このような結婚観は、下重さんの世代では非常に珍しいものだったでしょう。家族の在り方についても同様で、「女性が家族に尽くすのを美徳、美談のように語りがちですが、私は納得がいきません。自分はひとりなんですから、誰のためであっても、自分を犠牲にしてはダメです」と、世の中の「当たり前」に縛られることはありませんでした。


自分を犠牲にして家族に尽くすことは、
自身のためにもならないし、相手のためにもならない。

──『ゆうゆう』(主婦の友社)2018年11月号「[すっきり生きるインタビュー]家族との関係を問い直すと心のもやもやが整理されて、今後の生き方も見えてきます 作家・下重暁子さん」より


このように家族を一歩引いたところから捉えることができたのは、下重さんとお母様との関係が大いに関係していたようです。「私の母は『暁子命』の女性で、子である私に人並み以上にかまい続け、それが息苦しくてたまりませんでした」。