ヤクルト1000に関する研究論文を医師が解説


山田:以前、この番組で地中海式ダイエットをご紹介しました。その際に、地中海料理が健康によいことを検証するため、「ランダム化比較試験」と呼ばれる臨床試験が行われ、心筋梗塞や脳梗塞の発症が少なくなったと証明された話をしましたよね。

このヤクルト1000も、地中海式ダイエットほどの規模の研究ではありませんが、同じように「ランダム化比較試験」をしています。ヤクルト1000と、ヤクルト1000と同じ成分で乳酸菌が入っていないものを準備し、それぞれを飲んだ人で比較をする、という試験をしたのです。
まず、この試験を実施したことの価値が極めて高い、とお伝えしたいと思います。

一方、そのことと、ヤクルトを飲めば健康につながるかどうかは関係がありません。また、ヤクルトという会社が行った試験という点も考慮すべきです。その食品の有効性を示したいと思っている会社が実施していますから、偏りが起こる可能性も考えられますよね。

 

碓氷:なるほど。ヤクルト1000のパッケージには、「乳酸菌シロタ株」と書かれています。この成分に関する研究ということですか?

山田:そうですね。試験を目前に控え、ストレスを抱えている医学部4年生を被験者にして、乳酸菌シロタ株が入っている本物と、入っていない偽物を飲んだ人を8週間比較した試験です。

この研究は、「ストレスに起因したお腹の不快な症状にどのような差が出るか」ということを中心に調べるために設計されました。
それ以外にも、ストレスに関連するとされているホルモン、「コルチゾール」の値も比較し、いろいろな角度からストレスに差があるかどうかを調べたのです。

ですが、その結果、お腹の不快な症状のスコアに、大きな差は見られなかったのです。

碓氷:そうなんですか?

山田:差はありました。けれど、その差は1点差ほどだったのです。1点差とは何かというと、「非常に重い」と「重い」の差や、「非常に軽い」と「軽い」の差です。
「非常に軽い」と「軽い」の違いは主観的なもので、たしかに下がったとは言えるものの、1点差レベルの差異ですよね。この結果で、ストレスに起因したお腹の不快な症状スコアが下がったと言えるのかは疑問です。

新里:「非常に軽い」と「軽い」の間には、差はない気がしますね……。

山田:そうですよね。実は、それ以外にも懸念点があります。