どちらかといえば、私自身も物持ちは良い方で、捨てるのはもったいないと思うタイプ。消耗品に関しても、子どもが赤ちゃんの頃、使い捨ての紙おむつは外出するときのみ。普段は布おむつを愛用していたくらいです。だからこそ、多少高くても長く使える気に入ったモノを購入するようにしています。

しかし、「もったいない」精神にとらわれ過ぎるのも要注意。一向に捨てられなくなってしまうと冒頭の内田さんのご家庭のように、家の中は使用済みティッシュやらスーパーでもらったビニール袋やら使わないモノの類であふれ、必要なモノがなかなか見つからず、つい無駄遣いをしてしまう、という悪循環を生み出すことになります。

過度の「もったいない」思想が、モノを処分できない、片付けられない行動の言い訳となっているのであれば、下手をすれば生活に弊害を及ぼしかねないということです。


「いつか使う」は「いつか」の期限を○ヶ月と決めて捨てる

 

年代的に「もったいない」思想は、高齢の方にもよく見られる傾向です。
老親が施設に入所するため、実家を処分することになった遠藤良子さん(仮名•60歳)が、モノにあふれる実家の片付けをしたときのことをこんな風に聞かせてくれました。

「高齢者にとって、処分すべきかどうかを判断するのは、非常に困難な作業なのだと痛感しました。どんなモノも『これ使う?』と聞くと、『いつか使う』という答えしか返ってこないのです。モノのなかった戦前生まれの両親にとって、『廃棄は罪悪に等しい』というような感覚すらあるようでした。その上、何かを判断することは気力も体力も必要なのです。時間もありませんでしたから、結局、業者に頼んですべて処分してもらいました」

 

このように、「いつか使うかも」と判断を留保するなら、3ヶ月〜1年といった期限を決めてしまうのも一手です。期限を過ぎても使う機会がないのであれば、「いつか使う」の「いつか」は来ないものと考え思い切って処分する、と決めておくのです。

「もったいない」と唱えつつ、家の中に不要なモノをため込み、それによって暮らしにくくなったり、モノを探す手間や時間、そしてお金がかかったりすることこそ、モノがあふれる現代においては、よっぽどもったいないと言えるのかもしれません。

黒田尚子(くろだ・なおこ)さん
CFP®️1級ファイナンシャルプランニング技能士。1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、92年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年独立系FPとして転身を図る。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談を中心に幅広く行う。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。がんとくらしを考える会・理事、城西国際大学・経営情報学部非常勤講師なども務める。主な著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』等、監修書に『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』『おひとりさまのはじめてのエンディングノート』がある。

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構成/金澤英恵