ノルウェーの奇才、トリアー監督が閃いた物語

© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST -  SNOWGLOBE -  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

脚本も手掛けた監督はノルウェーの奇才ヨアキム・トリアーです。カンヌ国際映画祭コンペティション部門と「ある視点」部門に今回の作品を含めて3度も正式出品される実績を持つクリエイターです。北欧作品らしいスタイリッシュなルックとテンポ、音楽も合わさって、上映された各国で高評価されています。限定公開されたアメリカでは2020年から2022年公開の外国語映画の中で韓国映画『パラサイト 半地下の家族』などに続くスクリーンアベレージ3位の記録を作る人気ぶり。

日本での公開(7月1日~)は始まったばかりですが、坂元裕二的ノルウェー映画として注目したいところ。勝手ながら、そう言いたくなるのは、女性の物語であるのにも関わらず性別に偏りがなく、「わたしの、僕の、彼/彼女の」として共感できる点も共通しているからです。

 

プロダクションノートによると、トリアー監督は「今この時、僕の人生において、心の底から語りたい物語は何だろう」と考え、ユリヤのキャラクターを閃いたそう。「自分を探し求めると同時に、自分を変えられると信じている。でも、時間と自分自身の限界に向き合うしかなくなる。僕は彼女の強い願いには共感している」と言葉を続けています。

それって、普遍的なこと。だから、国境や年齢を超えて、誰もが30歳のユリヤの人生の過程に共感できるのだと思います。

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時代と経験が自分を作る。これも映画『わたしは最悪。』が伝えたいメッセージの1つなのかもしれません。終盤、恋人のアクセルがちょっとした老婆心でユリヤに伝えるセリフから、それを読み取ることができます。「形のある“物”の文化の中で育って、今の僕ができた」と言って、ユリヤに諭します。複雑な世の中だろうが、いつの時代だろうが、失敗して、経験して、その時は何の意味があるかわからくても、自分を作っている。そんな人生の本質を感じることができそうです。

ラストシーンのユリヤの姿を見て、もう1つ思うことがありました。10年後には“大豆田とわ子”になっているはず……。モテながら適温で生きていると思わせます。

<作品紹介>

『わたしは最悪。』

監督:ヨアキム・トリアー (『テルマ』(’17)、『母の残像』(’15)) 
脚本:ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム
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7月1日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー



構成/山崎 恵
 

 


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