「君、誰?」人違いを味方につける


出版社の応接室に通されたものの、出てきた編集長と話すと、「君、誰?」。なんと同じ時刻にアポがあった人と間違われたことが発覚。

「ご縁とは不思議でありがたいものですね。『ところで君は、何しにきたの?』と編集長が訊いてくださり、私は夢中で本を出して売り込みをしました。すると、なんと気に入って下さって、当時のバブル的世相を反映して、CAフライト旅日記を描いてみたら、と売り込みが成功したのです」

写真/高山浩数さん

偶然をチャンスに変えたNOKOさんは、情報雑誌に1P分のイラストエッセイを掲載してもらえることに。掲載後、そのコーナーが人気を呼び、2P分に拡大。そのあたりで編集部が「これ面白いよ、単行本にしよう!」と盛り上がったそうで、NOKOさんのところに編集長が直々に挨拶にやって来ました。

 

「いよいよ自分の名前で本が出せることになり、ここが頑張りどころ! と覚悟を決めました。CAは数日から1週間ほど海外に出て、3日程度の休みが入ります。この休みで集中してイラストを描いていました。フライトやステイ中にネタをまとめて、夜にホテルでネタを整理していました。睡眠時間を削っていましたが、仕事で見聞きした海外の最新事情を日本に紹介できるのがとっても楽しくて、やりがいを感じていました。

ただとっても忙しくて、若かったからできたなあ、って思います。私、絵の仕事を始めて30年以上になりますが、1回も依頼を断ったことがないんです。時間がタイトな時も、なんとか遊ぶ時間や寝る時間を削って描いてきました。それが、プロとしてなんとか続けてこられた秘訣のような気がします」

秘めたる情熱を持ってCAとイラストレーターの二足のわらじを履き、仕事を続けたNOKOさん。当時は会社もおおらかで、「社名を出さないなら、エッチなこととか品のないことは描かなければまあいいよ」と放っておいてくれたそう。

そんな風に忙しくも楽しい二足のわらじ生活をしていたNOKOさんでしたが、30歳を過ぎた頃、立て続けに転機がありました。