移住する「場所」を決める際に重要なことは?


移住するうえで場所選びは大切な要素ですよね。交通の利便性、教育機関や医療機関などの充実度をはじめ、さまざまな条件をしっかり比較検討して決めるのがベストなのかと思いきや、宇都宮さんの見た現実は少し違っていました。

「移住者を取材していて気がつくのは、『いくつもの候補地を挙げて、その中から最適な場所を選んだ移住者は少ない』という事実だ。言い換えれば、あまり比較検討せずに移住先を決めてしまう人がとても多いのだ」

なぜそんな思いきったことができてしまうのか? 宇都宮さんはその理由をこう述べています。

「多くの人に話を聞いているうちに行き着いたのは、『どこに住むか』ということより、『そこでどんな暮らしを営みたいか』をイメージしている人ほど、移住生活を充実させているという結論だ。『どこに住むか』をゴールに設定してしまうと、場所を選定するとき、慎重になりすぎて、それがすべてになってしまうきらいがあるようだ」

 


「どこに住む」という発想は、一種のブランド志向


確かに、場所選びに心血を注いでしまうと、決定した時点で燃え尽きてしまう可能性がありますよね。宇都宮さんは、移住する場所を決めるコツをこのように示唆しています。

「たとえば『のどかな雰囲気のカフェやレストランを営みたい』『川のそばで暮らしてカヤックを楽しみたい』『焚き火やBBQを日常的に楽しみたい』『林業や農業を職業としたい』『マイガレージでDIYライフを堪能したい』といったように、その人なりの目標を設定していれば、自ずと候補地は絞り込まれるであろうことは想像していただけるだろう。なにより『どこに住む』という発想は、言わばブランド志向の延長線上にある。移住したい人は、それぞれに理想とする暮らしがあって移住するわけだから、ブランド志向で移住したとしても、果たして心の底から満足できる生活を送れるだろうか」

 

冷静になればわかることですが、移住は「なにをしたいか」を決めるのが最優先であり、場所選びはあくまでもその次。ところが、いろんな雑音が入ってくるとその原則がわからなくなってしまうのでしょう。宇都宮さんは、シンプルにその真実を言い当てています。

「『なにをしたいか』という問いの先にある候補地はきっと有力だ」