移住先で良好な人間関係を築くには?


移住先での「人間関係」は、お金と同じくらい不安をあおる要素ではないでしょうか。隣人の顔を知らなくてもやり過ごせる都会とは違い、田舎暮らしでは否が応でも近隣住人とのつき合いを求められることは、都会暮らししか経験のない人でも知っているでしょう。宇都宮さんも人間関係のことにはしっかり言及しています。

「筆者も知人のいない山奥に引っ越してから、半年ほどは大家さんとの関係性のみで、地域の人脈がゼロの状態が続いた。住民の人数も都会と比べて圧倒的に少なく、寂しさをひしひしと感じていた。そんな状況が2年、3年と続けば田舎暮らしをあきらめていたかもしれないとさえ思う。だが、時間が経つにつれ、心置きなく話せる相手が少しずつ近所にでき、寂しさはいつの間にか消えていった。振り返ってみると、地域の中心人物と出会ったことで、そこから一気に人脈が広がっていった感覚だ。好ましい人脈が広がったなと実感すると同時に、移住の満足度も突如、倍加した」
 
実のところ宇都宮さんは近所付き合いが苦手だったそうですが、そんな人でも良好な人間関係を築くことができたと聞くと勇気が出ますよね。その一方、元々の住人と移住者との間に軋轢が生じ、移住者が村八分にされたという悲しい記事をたまに目にしますが、実際のところはどうなのでしょう?

「そうした事例は稀である、と言いたい。むしろ、すばらしい人々との出会いが、田舎暮らしには待っていると、ポジティブな可能性に期待してみることをおすすめする。筆者の場合、隣人の存在など気にすることもないような都会生活が40年以上も続いた後に、まったく縁もゆかりもない奥多摩の山奥へと移住した。もちろん、移住先でのご近所付き合いはとても不安だった」

 


早急に友だちをつくろうとしすぎないことが大事


まさに案ずるより産むがやすしですね。さらに宇都宮さんは、移住先での人間関係を築くコツについても言及しています。

 

「早急に友だちをつくろうとしすぎず、かといって近隣との断絶は避けながら、少しずつ気の合ったご近所さんを増やしていく、くらいがちょうどいいだろう。過疎の村などでは村八分といった類の、都会ではありえない文化が現代でも厳然と残っている。自分のどんな行為が近隣で反感を買うかも分からない。焦ることなく、その地域の風潮を知り、馴染んでからでも近隣との関係構築は遅くない」