過去を解決することはできなくても、学ぶことはできる


ウードはボスとともに、タイ北東地方の玄関口であるコラート、タイ77県で最も小さい県であるサムットソンクラーム、タイ北部に位置する第二の都市チェンマイなどを巡ります(元カノは1人だけじゃない!)。いろんな理由や思い、すれ違いなどがあって別れたわけなので、歓迎されるとは限りません。

旅の途中、地方で酒を飲むボス(左)とウード

「このストーリーを作る時に、自分の気持ちを感じたままに受け止めようと思いました。なので、私自身も元カノたちに会いに行って、話を聞いたり、当時の思い出を振り返ったりしてみたんです。でも、話をしてくれた人もいれば、完全に拒絶された人もいて、必ずしも自分が想像していた通りにはなりませんでした。映画の中のウードの気持ちは、まさに私が実感したことでもあるのです。この経験を通して思ったのは、過去を解決することはできなくても、学ぶことはできる。それをこの先の人生に活かしていけるのではないか、ということです」

 

ウードは自分の命が残り少なくなったことで、元カノとの再会を望みましたが、その行為自体が相手を傷つけたり、逆に自分が傷ついてしまったりすることもあるかもしれません。

「カーウァイが提案してくれたのは、死が近い男性が元カノに会いに行くというストーリーで、テーマは決まっていませんでした。でも、私自身が実際に元カノたちに会いに行った経験から、謝罪と感謝、そして『またね』という3つのキーワードに集約できると思いました」

ウードがニューヨークで暮らしていた頃に出会った、ダンサーのアリス(右)。現在はコラートでダンス教室を営んでいる

再会した当初はどこかぎこちなかったボスとウードでしたが、車で元カノたちを巡る旅を経て、いつしか二人がかつて親友だった頃に戻っていました。旅の終わりに訪れたのは、ボスの故郷でもあるビーチリゾートのパタヤ。ボスは、元カノたちをイメージして作ったオリジナルカクテルをウードに振る舞います。しかし、ここでウードがずっと胸に秘めていた“秘密”を語り始め、もう一つの驚くべき物語が明らかになっていくのです。