近年、日本ではタイBLドラマや、T-POP(タイ・ポップス)などに注目が集まっていますが、さかのぼること5年、『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017)というタイ映画が本国では年間ランキング1位となり、日本やアジア各国を中心に大ヒットしました。映画好きの人なら記憶にあるのではないでしょうか?(Netflixamazon primeなどで配信中) その作品を手掛けたバズ・プーンピリヤ監督の最新作『プアン/友だちと呼ばせて』が8月5日(金)から日本でも公開されました。公開に合わせて来日中のプーンピリヤ監督にお話をお伺いしました。

 


デビュー作の大コケと『バッド・ジーニアス』の大ヒットが教えてくれたこと


『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』は、貧しい家庭ながら天才的な頭脳を持ち、特待生として進学校に入学した女子高生が主人公。裕福だけど勉強が苦手な女友達を試験中にカンニングで助けたことがきっかけで、富裕層の同級生を対象に、お金と引き替えにテストの答えを教えるカンニング・ビジネスに手を染めることになるというストーリーです。計算されたスタイリッシュな映像と、手に汗握るスリリングな展開が秀逸な作品です(未見の人はぜひ観てみて!)。

 

バズ・プーンピリヤ監督
1981年、タイ・バンコク生まれ。シーナカリンウィロート大学の芸術学部で舞台演出を学び、修士号を取得。テレビ広告業界で働いた後、ニューヨークに渡り、プラット・インスティテュートでグラフィックデザインを学ぶ。2011年にタイに戻り、ミュージックビデオの監督を務めた後、2012年に初の長編映画であるホラー・スリラー『COUNTDOWN』(未)を監督した。その後、2作目の長編映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(17)が、アジア全域で大ヒット。これからの世界的な活躍がますます期待される俊英の監督。

 

プーンピリヤ監督にとって長編映画2作目のこの作品がアジア全域で大ヒットし、タイ映画史上最も成功を収めた作品となったことで、監督自身の才能にも注目が集まりました。『恋する惑星』(1994)や『花様年華』(2000)などの世界的なヒット作を手掛けた香港の巨匠ウォン・カーウァイもその一人。『プアン/友だちと呼ばせて』は、カーウァイがプーンピリヤ監督に「一緒に映画を作ろう」とオファーし、製作総指揮を務めて完成した作品なのです。本作は2021年のサンダンス映画祭(アメリカ)でプレミア上映され、ワールドシネマドラマティック部門でクリエイティブ・ビジョン審査員特別賞を受賞。翌年のタイでの公開では初登場1位の大ヒットとなりました。

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の大成功で、プーンピリヤ監督自身に次回作へのプレッシャーはなかったのでしょうか?

「『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のおかげで、多くの人が私に興味を持ってくれるようになりました。ドアを開けてもらったような感じで、チャンスに恵まれました。ウォン・カーウァイが声をかけてくれたのもそう。よく、プレッシャーを感じるか? と聞かれるけど、感じたことはありません。そう言っても誰も信じてくれないのですが、実はデビュー作が大コケして興行収入で失敗し、批評もひどいものでした。でも2作目は大ヒット。ほぼ同時期に最低と最高の経験をしたからこそ、前に進むしかないと思えるようになりました」