時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。


異性の友人に「二人で海外旅行に行かない?」と言われたらどうですか。

 

私の女友達には、男性の友人と二人で海外旅行に行く人がいます。ロマンチックな感情なし、経済的にも社会的にも立場は対等、趣味が合い話の合う、よき旅仲間だそうです。行き先によっては女二人旅だとセキュリティ上不安な時もあるけど、男性と一緒だとそのリスクを減らせるという利点もあると。確かに。

話を聞いて、そんな自立した二人ってとっても素敵だわと思いました。ことに男女の人間関係をなんでも恋愛文脈に持ち込みがちな中年世代では、稀有な二人と言えるのではないでしょうか。

イラスト:shutterstock

見るもの全てのコンテンツに男女のセックスと恋愛が横溢していたばかりか、セクハラやパワハラという概念も、もちろん性的同意という概念も全くなかった時代に青春を過ごした今の中年世代は、異性の友人を作るのがなかなか難しいかもしれません。何しろ『東京いい店やれる店』という本が売れていた野蛮な時代です。欲情していなければ男じゃない、恋してなければ人じゃないと言わんばかりの乱痴気ぶりでした。
先述の友人も、男友達と二人旅をすると言うと、同世代の男性から珍獣扱いされるそうです。性的な関係の介在しない男女関係なんて何が面白いの?そんなの成立するの?と、彼らにはとても信じられないらしいのです。