若い人たちには新感線や先輩のすごいところを全部盗んでいってほしい!


4年に1度、オリンピックイヤー感覚で劇団☆新感線に客演されている天海さん。劇団☆新感線はいのうえ歌舞伎にしても、今回のような生バンドが入ったRシリーズにしても、上演期間はゆうに3ヵ月を超えるものが多く、上演時間も3時間オーバーコース。劇団☆新感線からのお仕事を引き受けるときの気持ちはどういったものなのでしょう。そして、初めてお仕事をされたときの思い出についても聞いてみました。

天海:嬉しいし、本当にありがたい。あー、また呼んでもらえているんだって思いますね。最近は体力的にも段々「大丈夫だろうか?」と思い始めてきましたけど(笑)。でも新感線に関わる方はたくさんのお客さんが笑ってくれて、喜んでくれて、笑顔で帰ってくれるためなら何でもする!という方々です。演出もそう。そのスタンスは本当に素晴らしいとずっと思っています。

 

初めて劇団☆新感線に参加したときは、すごくお芝居しやすい場所だなと思った印象がありました。宝塚もそうなのですが、(舞台の)ここのタイミングで出てきて、ここで止まって、この場所でセリフを言って、というふうに“振り付け”のような演出をされるので、それに戸惑うことはありませんでした。反対に野田秀樹さんの舞台に初めて出たときのほうが驚きで、「なんでみんなこんなに自由に動けるんだろう」って思ったくらい。私、全然動けないんだ、何やってきたんだろう、今までって思っちゃいましたから。

 


今回は、石田ニコルさんや神尾楓珠さん、西垣匠さんなど、新感線に初参戦という若手メンバーが多数いらっしゃいます。そんな後輩たちに天海さん、古田さんからのアドバイスは?


天海:そんな、アドバイスなんて……。でも、みなさん真っすぐで一生懸命だし、ドキドキしながらワクワクもしてくれているので、そんな方々と一緒に舞台をつくれるのはとても嬉しいし、新感線のいいところ、先輩たちのすごいところをどんどん盗んで、どんどん身に付けて、それぞれの場所に持って帰ってほしいです。

古田:ニコちゃん(石田ニコル)はミュージカルをやっているから舞台のつくり方を分かっていると思うけど、映像の世界でやっている西垣(匠)や神尾(楓珠)は多分分からないはず。舞台は“アップ”がないですからね。せっかくだから新感線はライトが集光したり、それが弾け飛んだりすることで“アップ”の代わりになっているんだよってこととかを楽しいなって思ってもらえりゃ、やりがいがあるかな。

 

天海:もうひとつ思うのは、舞台の上で“見得を切らせてもらえる演出”ってなかなかないでしょう? 新感線ならではの見得の切り方ももちろんあるから、それはとても勉強になるはず。どの角度でバン!っていくと一斉にお客さんが見てくれるかとか、タイミング、間の引っ張り方……。間違いなく学んで損がないものばかり。いのうえさんの演出も、その人が引き立つように考えてくださるし。普通のお芝居で見得を切るなんてほとんどできないわけだから、知っておくと絶対に武器になると思います。


天海さんが初めて劇団☆新感線に出演された『阿修羅城の瞳』の劇場は、新橋演舞場でした。そして今回も東京公演は新橋演舞場で行われます。


天海:20年ぶりぐらいです。思い出すのは“花道”。普通、走らない場所ですからね(笑)。なかなか立てる場所ではないのですごくありがたいし、楽しみでもあります。奈落で着替えて花道のスッポンのとこから出ていったときの景色とか、匂いとか。そういうのは覚えていますね。


劇団☆新感線の作品は主役に外部の俳優さんを迎えて、劇団員の方々がガッチリと脇を支えるというスタイルでの上演が有名です。男性の俳優さんが主役を務められることは多々ありますが、女優さんの抜擢は比べるとやや少ない印象です。今回は五右衛門ロックのスピンオフ作品でありながら、サブタイトルに『海賊女王の帰還』とあるとおり、タイトルロールを背負うという重責もあります。


天海:古田さんが「ゆりちゃん、うちの劇団よろしくね」って言うから、もう「泣いちゃうから言わないで」って言ったんです(笑)

古田:オイラたち、おんぶに抱っこだから(笑)

天海:『蒼の乱』(2014年)に出演したときに、人様の劇団の真ん中に立つというのは「とても重い」と感じましたね。これだけの人達がいる劇団の真ん中っていうのは、本当に想像以上にすごい場所。「重い」という言葉だとちょっと違うかもしれないですが、「しっかりしなければいけない」という気持ちでした。

『修羅天魔』の場合は群像劇でもありましたし、古田さんも一緒に出てくださっていたので、それほどの重責は感じなかったのですが、『蒼の乱』のときは古田さんがいないところでやらせてもらうというのが、責任重大だったなという思い出があります。「これ面白くないね」って言われちゃいけないと日々思っていましたから。今回は古田さんもいらっしゃるし、安心!(笑)

インタビューは終始、古田さんが話題のトスを上げて天海さんが打つ、古田さんがボケたら天海さんが突っ込む……という展開で、おふたりの仲の良さが伝わってきます。後編ではコロナ禍でいまだに難しい状況を強いられている演劇の世界や、今回の『薔薇サム』でテーマのひとつに取り上げられている【世代交代】など、さらにディープなところについて、おふたりの本音を伺っていきます。

 
 

古田新太 Arata Furuta
1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。劇団☆新感線の看板役者。大阪芸術大学在学中の1984年から劇団☆新感線に参加。エネルギッシュで迫力ある演技には定評がある。劇団公演以外の舞台にも積極的に参加しているほか、自身で企画・主演を務める演劇ユニット“ねずみの三銃士”などもある。活躍の場は広く、バラエティ番組やCM出演、コラムニストとして本の出版も。劇団公演以外の近年の主な出演作品は【舞台】『ロッキー・ホラー・ショー』(22・17・12)、『衛生』(21)、『獣道一直線』『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』(20)、【映画】『KAPPEI』(22)、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『空白』(21)、【ドラマ】『俺の可愛いはもうすぐ消費期限⁉(EX・22)、『SUPER RICH』(CX・21)など。現在バラエティ番組『関ジャム~完全燃SHOW』(EX)にレギュラー出演中。映画『空白』により、第43回ヨコハマ映画祭、おおさかシネマフェスティバル2022、第31回日本映画評論家大賞の主演男優賞を受賞。ドラマ「DORONJO/ドロンジョ」(wowow)が10月7日(金)より放送開始


天海祐希 Yuuki Amami
1967年8月8日生まれ、東京都出身。1987年宝塚歌劇団に入団、95年に退団。以降ドラマ・映画・舞台・CMなどで幅広く活躍。近年の主な出演は【舞台】『広島ジャンゴ 2022』(22)、『贋作 桜の花の満開の下』『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』(18)、『子供の事情』(17)、【映画】『老後の資金がありません!』(21)、『私は白鳥』(ナレーション・21)、【ドラマ】『緊急取調室』シリーズ(EX・14‐21)、『トップナイフ‐天才外科医の条件‐』(NTV・20)、『BOSS』シリーズ(CX・09‐21)など。23年2月3日(金)より映画『仕掛人・藤枝梅安』が公開予定。劇団☆新感線には本作が5作目の参加。

<作品紹介>
2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演
SHINKANSEN☆RX『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』

 

作:中島かずき 作詞:森雪之丞 音楽:岡崎司 振付・ステージング:川崎悦子 演出:いのうえひでのり

出演:古田新太 天海祐希 / 石田ニコル 神尾楓珠
高田聖子 粟根まこと 森奈みはる 早乙女友貴 西垣 匠 / 生瀬勝久 ほか

【富山公演】 完売御礼 ※当日券あり
2022年9月9日(金)〜11日(日) オーバード・ホール
【新潟公演 BSN新潟放送開局70周年】 完売御礼 ※当日券あり
2022年9月22日(木)~25日(日) 新潟県民会館 大ホール
【大阪公演】 チケット発売日 2022年9月18日(日) 各種プレイガイドにて
2022年10月5日(水)~20日(木) フェスティバルホール
【東京公演】 チケット発売日 2022年9月18日(日) 各種プレイガイドにて
2022年11月1日(火)~12月6日(火) 新橋演舞場


衣装協力(天海さん)
ドレス/divka 03-5468-2118
イヤリング/Donatella Pellini 03-3274-8248
バングル/Pellini 03-3274-8248
 
撮影/田上浩一
ヘア&メイク/田中菜月(古田さん)、林智子(天海さん)
スタイリスト/渡邉圭祐(古田さん)、えなみ眞理子(天海さん)
取材・文/前田美保