演技をするというより、自分自身でいられる曲で滑りたい

 

――北京五輪はご覧になりましたか。

見ました。やっぱりトップに来る選手ってジャンプの安定感がずば抜けているんですよね。もちろんフィギュアスケートには、スピン、ステップ、スケーティング、表現と本当にたくさんの項目があるんですけど、最大の得点源になるのはジャンプ。ジャンプで勝敗がつくことを実感したので、上に行きたいなら、そこを強化しなきゃいけないのかなと。

――山本選手は昨年の全日本を終えて、わりと早い段階で次のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指すことを宣言されていましたね。

全日本が始まる前から、上の壁がすごく高いなというのはわかっていたので、五輪は夢でもありますし目標ではあったんですけど、今の自分では正直叶わないと感じるところはありました。だから気持ちの切り替えはわりとすぐにできたのかなと。次の4年もあっという間に過ぎてしまうと思いますけど、1試合1試合、自分がレベルアップしていくことを今は目標にしています。

全日本での山田満知子コーチとのキス&クライ。SPの高得点に満知子先生も思わずガッツポーズ。写真:西村尚己/アフロスポーツ

――全日本を終えて、コーチの山田満知子先生からはどんなフィードバックがありましたか。

もう来シーズンに気持ちを切り替えて、プログラムをどうするという話し合いをしました。先生から来シーズンはイメージをガラッと変えたいということで、タンゴとかフラメンコとかラテン調の曲を何曲かいただいて。僕も新しい自分を見せたい気持ちがある一方で、自分らしいスケートを見せられるような曲で勝負したいなという気持ちもあって。それで、僕からフリーはラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』で行きたいと伝えました。

 

――山本選手は今回に限らず、わりと選曲に関わることが多いですよね。選曲にはどんなこだわりがあるんですか。

(2020-21シーズンの)『黒い瞳』は自分のまた違った一面を見せられたプログラムだったかなと思うんですけど、そういう曲も滑った上で、今は自分のイメージを無理に変えなくてもいいのかなと。それより自分の良さをもっと伸ばしていけるプログラムでやっていきたい気持ちが強いです。演技をするというより、自分自身でいられる曲という意味で『ピアノ協奏曲第2番』に至ったというか。満知子先生はそういう僕の考えもきちんと聞いてくださるので、一緒に戦っている感覚がすごくあります。

――山本選手の良さというと、やはりあのノーブルな滑りにある気がします。

自分ではまったく意識はしていなくて。というか、意識する余裕もないから普通に自分のスケートをやってるだけなんですけど(笑)。でもいろんな方からそうやって評価していただけるのはうれしいので、そういった良さをショートもフリーも前面に出していけたらなと思っています。